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アート系ワークショップのつくり方!?

突然ですが、みなさまはアート系ワークショップに参加されたことはありますか?

私は幼稚園の頃に、隣駅近くの美術館のワークショップによく参加していました。夏には色水遊びをしたり、秋には落ち葉でコラージュを作ったり…。
幼い頃の私にとって、美術館は作品を鑑賞する場所というよりは、手を動かす場所でした✂️!

一方で、アート系ワークショップというと「ハイセンスな人ばかりが集まるんじゃない?」「美術の知識がないからちょっと気が引ける…」という声が聞こえてくることもしばしば…💦

今回は慶應義塾大学アート・センターで教育事業を担当され、数多くのワークショップを手がけていらっしゃる橋本まゆさんにお話を伺いました!🏃‍♀️

早速インタビュー開始!

この記事の読者の方のために、まずは簡単に橋本さんの自己紹介をお願い致します!✨

こんにちは。慶應義塾大学アート・センターの橋本まゆです。
私は慶應義塾大学の美学美術史学専攻の大学院を出た後、青森県立美術館で教育事業の職員として3年間勤務しました。大学時代は、特に教育分野を専門に研究していたわけではないのですが、青森県立美術館での学校団体の対応やボランティアの研修などの仕事を通して、教育事業にも関心を持つようになりました。今は慶應義塾大学アート・センターの所員として、ワークショップをつくる仕事に携わっています。

ありがとうございます!🌼
橋本さんのお話を聞いて、私が中学生の時に学校の授業で博物館のワークショップに行った記憶が蘇ってきました…!こうしたイベントは、橋本さんのような方の存在あってのことなんですね!💭

実は、私が青森県立美術館で働き始めた時期は、ちょうど国立美術館が教員のための研修などを始めるなど、学習指導要領の改定に合わせて、「学校の授業で美術館や博物館にいこう!」という雰囲気が盛んだった時期なのです。今では、学校教育の一環で美術館や博物館を訪れることは珍しくなくなってきていますが、それ以前の時代では、まだ一般的ではなかったように思いますね。

大学とアートとワークショップ

(さまざまな美術館の教育普及プログラムのページを見ながら)
美術館のホームページでは、アートカード(絵画や彫刻など、さまざまなアート作品の写真を手のひらサイズのカードに掲載したもの)の活用方法なども紹介されているのですね。面白い…!👀

アートカードは、国立近代美術館などをはじめ、さまざまな美術館で提供しています。作品の感想を述べ合うだけではなく、作品カードをランダムに並べてストーリーを作ったり…。子供たちのさまざまな視点を養うことができるアイテムなのです。美術館では、美術館の建物や所蔵作品を軸にワークショップを計画することが多いですね。

なるほど…。それでは、アート・センタ一で開催しているワークショップと一般的な美術館のワークショップでは少し異なるのでしょうか…?🏫

そうですね…。一般の美術館とは異なり、アート・センターで行っているワークショップは、展覧会というコンテンツの中の教育事業のような形式を取ることが多いですね。また、何日かに分けて何度も展覧会を訪れてもらう構成にしたり、一貫校の場合は校舎に関連した作品を紹介するなど、参加する子供たちの関心に合わせてフレキシブルに対応できることが魅力だと思います。

関心に合わせてカスタマイズされたワークショップへの参加は、生徒さんたちにとってもかけがえのない経験になりますね…!✨

今回のワークショップは、近隣の中学校や大学附属の小学校の生徒さんたちを対象にしているのですが、まずは展覧会の作品をじっくりと紹介する構成にしています。生徒さんたちにとっては、普段あまり足を踏み入れる機会がない三田キャンパスですが、身近な地域の文化財に親しみを持ってもらいたいと思っています。

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ワークショップ設計の極意!🪄

橋本さんがワークショップをつくる際に、特に重視されていることはありますか?💭

子供向けのワークショップを扱うことが多いのですが、とにかく記憶に残る経験になるといいなと思います。そして個別の作品の情報や知識というよりは、ワークショップを通じて得た新しい視点を、日常生活の中に持ち帰ってもらえたらな、と思います。
子供たちの今後の人生の中でふと、今回の経験と何かがつながる瞬間があったら嬉しいですね。

ちなみに「我に触れよ」展は美術作品の修復をテーマにした展覧会ですよね🎨。修復というと専門的な話題も多いかと思いますが、生徒さんたちにどのようなアプローチをされる予定なのですか?

生徒さんたちにとって身近に感じられる話題を入れながら、本題に入るようにしています。例えば、今回参加してくれる生徒さんたちは、美術部に所属しているので「どんな作品を作ってるんですか?」という質問から、「もし、自分が作った作品をコンクールに出した時に、作品が壊れてしまったらどうする?」とか…。

自分のこととして考えられるような問いかけをするのですね!💡

一般的に、美術作品は学芸員がチェックして、不具合があれば専門の修復家に問い合わせるのですが、こうした専門的な知識というよりは、普段の関心と結びついて修復を考えるきっかけになればと思います。
特に相手が子供たちの時は、こちらが話したいことを話すのではなく、できるだけ寄り添えるように心がけていますね。

コミュニケーションの真髄に触れたような気がしました…!勉強になります。
橋本さんは、今回のワークショップを通じて、生徒さんたちにどのような視点を持ち帰って欲しいとお考えですか?👀

普段、展示室では、当たり前のようにきちんとコンディションが整えられた作品を鑑賞していますよね。しかし、作品が展示に耐えうる状態になるまでの過程には、修復家をはじめさまざまな人の手があることに思いを馳せてもらえたらと思います。普段、作品に「何が描かれているか」には注目することはあっても、作品が本質的に持っている物質的な脆弱さにはあまり注意が払われません。
そういうことを知ってもらうことで、身近なものに対しても、ケアして大切にする姿勢につながるのではないかと思います。

やはりここでも、日常との連続性を重視されているのですね!💡

そうは言っても、事前にシナリオの展開を想定し過ぎないことも重要です。
ワークショップは、人と人や作品が出会って行われることなので、予測が立てにくいこともあります。しかし、そうした不確定要素がワークショップの醍醐味でもあると思います。どうしたら面白いアイデアや意見を引き出せるのか、常に考えています。

なるほど…ワークショップは人と人との化学反応の場でもあるのですね…!🌡

橋本さんが考える「我に触れよ」展の魅力とは!

それでは最後に、橋本さんが考える「我に触れよ」展の魅力を教えてください🎨

修復は、制作者の手を離れた後の予期しないアクシデントや物語が見えてくる窓でもあります。
これは、作者が意図的に作品を通して見せようとしたものとは別の物語や価値です。もちろん、存命の作家に修復の方針を相談することもありますが、作者の意図が介在しない、予期しないものが見えてくる部分が修復の面白さだと思います。
こうした部分を踏まえた鑑賞は通常の美術館での鑑賞とはどのように違ってくるのか、子供たちの感想を知りたいですね!

特に、日本では修復した部分を目立たせない方法が主流であると聞いたことがあります。こうした機会がなければ、作品の修復について知るチャンスはあまりないですよね💦…

参加生徒さんたちにとって、かけがえのない経験になると良いですね。
橋本さん、本当にありがとうございました!✨

文責 : KeMiCo KOYURI


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