KeMCo「常盤山文庫×慶應義塾 臥遊―時空をかける禅のまなざし」展の楽しみ方②会場巡り 2/2〜解説冊子と回る二周目📕 〜
KeMCoでは、10月2日から「常盤山文庫×慶應義塾 臥遊―時空をかける禅のまなざし」展、通称「臥遊展」を開催しています。
会場を二周する今回の展示。KeMCo「常盤山文庫×慶應義塾 臥遊―時空をかける禅のまなざし」展の楽しみ方シリーズ第一弾の前回は、「まずは一周目」のご案内をしました💁🏻♀️
じっくりと作品を楽しんだところで、今度は解説冊子を手に二周目を回ってみましょう!📖
二周目は解説冊子を手に📕
自由に一周目を眺め終わったら、解説冊子を受け取ります⏬
いよいよ二周目のスタートです👍🏻
「常盤山文庫コレクション」に思いを馳せる☁️
さて、作品をもう一度見る前に、ここで展覧会のタイトルに再注目してみましょう。「常盤山文庫×慶應義塾」とあります👀
これについては、エレベーターを降りてすぐのところに解説パネルが用意されています。
ここでも少しご紹介させていただきたいと思います🌱
つまるところ、今回の展覧会は、「臥遊」の世界に浸っていただきたい……という性格と同時に、もう一つの性格(役割)を持っています。
それはすなわち、慶應義塾が所蔵する作品とともに、「常盤山文庫コレクション」という持ち主の異なるコレクションの中から、KeMCoでお預かりさせていただいているもの(=寄託品)をご紹介する、ということです👩🏫
実は「常盤山文庫」は今年で創立80周年というメモリアルイヤー。今回の「臥遊展」は、これを記念した展覧会なのです✨
ちなみに、既に会期が終わってしまいましたが、同じく常盤山文庫コレクションの寄託先である東京国立博物館でも、80周年を記念してコレクションを展観する展覧会が開催されていました⏬
さて、コレクションが80周年を迎える、とはどういうことでしょう?
常盤山文庫HPを参照してみます⏬
蒐集=作品を収集する活動の始まりが、今から80年前であったのですね💡
そしてその活動の担い手であったのは、実業家であった菅原通濟さん(すがわらつうさい,1894-1981)という方。良い作品を集めるには、いろいろとご苦労があったようで……これについては、会場の解説コーナーの冊子や資料でぜひお確かめを👀
通濟さんの自宅に作品が集まっていくと、お宅のあった地名、鎌倉の常盤山を冠して「常盤山文庫」と呼ぶようになり、(⏫にも引用したように)そこには作品を囲む研究者たちのコミュニティが出来上がったのだそうです。
古(いにしえ)の作品を目の前にしたとき、まず想像するのはその作り手と、作られたその時代にその作品を取り囲んだ人々、ではないでしょうか。
しかしその作品が自分の目の前に置かれるに至るまでには、それを求めた人がいて、その人の元へ届けた人がいて、調べて評価を定めていった人たちがいて……。
コレクションに思いを馳せてみるとき、思いがけずたくさんの人の手と眼の繋がりの中で、その作品と出会うことができていることに気付かされます👨👩👧👦
作品の来し方行く末を想像する___そんな楽しみ方も、なんだかツウかもしれません。
作品を集まる人、作品を取り巻く人々について興味を持たれた方は11/14開催の臥遊展シンポジウム「コレクションがつなぐ、モノと人のネットワーク」で詳しいお話を聞くことができます👂
詳しくはこちら⏬
1. あこがれからはじまる禅〜祖師、聖者の姿、高僧の書
さあ、再びの展示室へ!
Room2の入り口を飾る書作品が4点。これらは「墨蹟」というのですね👀
解説冊子を読むと、先ほど、我々が見つめ、見つめ返された仙人たちは日本の禅僧たちにとっての「あこがれ」であり、彼らはその姿に絵を通して崇敬の念を寄せ、さらには墨蹟を通してその人柄や知恵に学んだことがわかってきます。
たしかに、「書は人なり」とはよく耳にする言葉です。見比べてみると、それぞれの書の雰囲気はまるで違うことがわかります。
文字の羅列は読めないや、とやや通り過ぎがちな筆者でしたが、冊子を手に内容や書いた人を知るとなかなかに味わいのあるものであることに気がつきました😯✨
書が表す雰囲気の違い。次回のnoteでさらに深掘りしてみたいと思いますので、お楽しみに😏
2. 極まりない景色〜時空を越える画と詩
続いて、Room1の二周目をはじめましょう。
Room2で墨蹟に興味が湧いてきたからでしょうか。山水の図に添えられた「書」に目がいきます。
この絵と書のセットを「詩画軸」と言って、添えられた書のことは「賛」、「賛」を書く人のことは「賛者」と呼ぶのです。絵と賛の関係に着目してみると、「臥遊」すべき世界の広がりが見えてきます。
例えば、出品番号17《雪景山水図》という作品があります。
パッと見ると、横長の画面に傾斜のゆるっとした稜線。右下には橋がかかります。
解説によれば、この「賛」の内容はこちら⏬
「賛」を読んでみることで、どうでしょう、雪景色の白が際立ち、嗅覚が呼び起こされてくる感覚がしませんか??
雪景色のシーンと張り詰めた空気。匂いを気にすることができないくらい、寒さに凍てついて赤らむ鼻。踏み散らかすことが躊躇われるほどの静寂と美しく降り積もった雪の分厚さが思い起こされて、気づけば雪景色の中に「臥遊」しているのではないでしょうか🌨
「賛」もまた、「臥遊」のための手がかりにしながら鑑賞してみてくださいね📖
3. 愛らしい動植物〜唐物から日本の文化へ
さあ、展覧会最後のセクションに参りましょう!
解説冊子を読んでみると、前回ご紹介したお猿のかわいさを引き立てるふわふわの毛が、「牧谿様式」であったことがわかりました。
牧谿は、生没年不詳の中国の画僧。鎌倉時代の終わりにその作品が日本に伝えられると、まさに日本人の「あこがれ」となりました。代表作として伝わる国宝《観音猿鶴図》(大徳寺所蔵)はとても有名ですね。「あこがれ」をきっかけに、筆法やイメージが受け継がれていく……そんな様子も想像されます。
想像といえば、⏫でコレクションを作った人たち、「常盤山文庫」とそれを取り巻いた人たちにも思いを馳せてみました。
解説冊子によれば、「愛らしい動物」セクションで展示されている、出品番号27《海棠白頭翁図》には、まさにコレクターのまなざしを感じるエピソードがあるようです。
「祐」とは、本作品の作者である祐周の「祐」。画面右上の落款印を見てみると……👀
「祐」の字、ありました!これを見て愛着が湧いたのでしょうか。
そう思って作品を見ると、海棠の花の可憐さによりぬくもりを感じるような気がします🤱
作品を見て直接に感じることの自由さとは別に、解説冊子から作品にまつわる情報を学ぶことで「臥遊」しやすく、さらには、「臥遊」できる世界もまた、奥行きが広がって、鮮明に楽しめるのではないでしょうか。
お帰りの前に
会場を満足に見終えられたら、お帰りは階段からのご案内です💁
でも、まだ気は抜けません😏
階段を降りていくと、出品番号20 雪舟筆《山水図》(左幅)の筆順を再現した映像展示コーナーが設けられています👀
むくむくと伸びやかに出来上がっていく山水に驚かされます。この驚きは、当時雪舟の周りで雪舟が筆をとる様子を見ていた観衆たちと同じ思いかも……?
そして、これが本当の最後!展示作品に見送られながら階段を降りて、「臥遊展」巡り、これにて終了です✨🎓
さいごに
本noteでのご紹介はここまで!かなり詳細にご紹介してきたつもりでも、まだまだ取り上げられなかった魅力的な作品がたくさんあります。
KeMCoは大学東門を出て右手すぐ🗺
息抜きがてら「臥遊」しに来てくださることをお待ちしております💫
【会期】2023年10月2日(月)〜12月1日(金)
11:00–18:00 土日祝休館
特別開館|10月14日(土)、11月25日(土)
臨時休館|10月16日(月)、11月20日(月)
※期間中に展示箇所の入れ替えをする作品がございます。
前期10月2日(月)~11月1日(水)、後期11月2日(木)~12月1日(金)
【会場】慶應義塾ミュージアム・コモンズ(三田キャンパス東別館)
どなたでもご覧いただけます(事前予約不要)
開催間近!⏩【シンポジウム】
2023年11月14日(火)18:00–20:30 *開場17:30
@慶應義塾大学三田キャンパス G-lab(東館6階)
どなたでもご参加いただけます(先着80名(定員になり次第締切)/事前予約制)
文責:KeMiCo Honoka