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展示室で作品調査の目線を体験!?第7回「オブジェクト・リーディング•リーディング: 精読八景」

・本題の前に…!

「オブジェクト・リーディング : 精読八景」展の見所をご紹介してきた「オブジェクト・リーディング・リーディング: 精読八景」シリーズも、今回を含め残すところ2回になりました…!

オープンから、早いものでもう二週間経ちましたね。

既に展覧会場を訪れてくださった方も、いらっしゃるでしょうか…?
(ありがとうございます!✨)

そして、まだ予約をしていない…!という方はぜひ、お早めの予約をお勧めいたします!

前回の KeMCoグランド・オープン記念企画「交景:クロス・スケープ」はおよそ2ヶ月間の開催でしたが、今回の展示はおよそ1ヶ月と少々短めです。

既にいらっしゃった方はお分かりいただけるかもしれませんが、「オブジェクト・リーディング : 精読八景」展は、見所がたっぷりです。

リピート来訪の可能性を念頭に、まずは会場に一度足を運ばれることをお勧めいたします…!

…前置きが長くなりましたが、今回ご紹介するのは、慶應義塾大学アート・センターの、ジグマール・ポルケ《リトマス》です。

連携展トップ-2

・ジグマール・ポルケの《リトマス》とは!?

ジグマール・ポルケは1941年生まれ、ポーランド出身の画家です。

デュッセルドルフ芸術アカデミーで、ゲルハルト・リヒター、アンゼルム・キーファーらとともにヨーゼフ・ボイスに学びました。

ドイツを代表するビッグネームばかりですね!

ポルケは化学顔料や、透明なポリエステルシートなどさまざまな素材や技法を組み合わせたため、その制作手法は「錬金術」と呼ばれることもあったのだとか。

《リトマス》は、既存のモチーフの転写の上に、二人の人物の線描や顔料のペイントがされています。

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筆で書いた時には見られないような偶発的な滲みなどによって、多層性・多義性を分離・結合させる手法が特徴的なのだそうです!

・彫らずに作る版画!?

この作品、リトグラフという方法を用いて制作された版画です🖼

リトグラフは、lithos(ギリシャ語で石という意味)を語源にしており、版面を彫らずに化学反応を利用して画像を描き出す手法のことです。

現代では金属板などを用いるそうですが、特徴はやはりなんといっても、描いたイメージを掘り出したりせずに、平面のまま印刷する点です!

この方法は、ドイツ人のアロイス・ゼネフェルダーが楽譜を印刷しようとして偶然発見したものなのだそうです💡

現代では、コンビニのネットプリントなどでも簡単に楽譜を印刷することができますが、昔は印刷一つするにも一苦労だったのですね…。

・版画って美術作品といえるの?

ところで、
 版画って大量に印刷できるコピーと何が違うの?
 美術品として価値があるの?
とお思いの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

よく見ると、版画には画面下部にその版画を刷った枚数とナンバーが記載されていることが多いのです(例えば5枚刷ったうちの4枚目なら、「4/5」など)。

このように美術作品は、無限に刷られるのではなく、刷られる量がコントロールされています。

また、その版画を刷った人が作家本人であれば、その署名があります。

《リトマス》にも、よく見ると数字やサインがきちんとありますね…!

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(作家本人が刷っていなかったとしても、担当した工房や担当者の名前が書かれていることもあります。)

このようなルールは、1960年の国際造形美術会議で作者のサインとエディションの表記を記載することが取り決められたことによるものです。

こうした要素もまた、版画の価値を左右する大きな要素です。

付属情報も、オブジェクトを知る大きな手がかりになりますね!🗒

・作品調査票で調査員体験!?

美学美術史学専攻の「精読の仕掛け」では「作品調査票」のフォーマットが紹介されています。

版画のための調査票では…

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作者や作品名に加え、署名や年記、モノグラムなどを記す欄も設定されていますね。

一方で、同じく美学美術史学専攻の「精読の仕掛け」として、掛軸の作品調書も紹介されていますが…

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版画の調査票とは異なり、材質の欄に絹や麻と書かれていたり、曲・双・隻など、日本美術特有の作品を数える単位が書かれています。

オブジェクトを知るために設定されている質問は、その研究領域によって異なるということです。

「八景ピース」の「オブジェクトを読み解くために、あなたならどんな問いを投げかけますか?」という部分は、まさに質問の設定を考えることで、逆にオブジェクトの本質に迫ろう、という試みでしたよね!

作品調査に立ち会うことは難しいですが、「八景ピース」を通じて作品調査をしている気分を味わうことができるかもしれません…!🔍

・アート・センターから、もう一点の出展作品は?

アート・センターからは、土方巽の舞踏譜《なだれ飴》が出展されています。

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土方巽は「暗黒舞踏」と呼ばれる新たな身体表現を創出したダンサーであり、世界的に知られた前衛芸術家です。

アート・センターは、1998年に土方巽アーカイヴを設立しています。

《リトマス》と《なだれ飴》を読み解くための共通したキーワードとは一体何なのでしょうか…💭

ちなみに、《リトマス》は1999年に制作された、今回の展覧会の出展作品の中で最も新しいオブジェクトです。

そして最も古いのは、やはり考古学専攻の​​縄文時代早期末の縄文犬骨です🐕

一つの展覧会でここまで異なる地域や時代のオブジェクトが一堂に会することは、珍しいですよね。

慶應義塾ならではの領域横断的な試みを、ぜひ実際に会場にいらして体感してみてください!✨

(文責 : 学芸スタッフKeMiCo KOYURI)

「オブジェクト・リーディング : 精読八景」展
会期は8月16日から9月17日
開館時間 11:00から18:00(土・日・祝日休館)です。

ご予約はこちらから
※入場には事前予約が必要です。