縄文時代の愛犬家グッズ!?第5回「オブジェクト・リーディング•リーディング: 精読八景」
突然ですがみなさま、この生き物、何だと思いますか…?
豚…?ネズミ…?猫…?
これは、縄文時代晩期(推定)に製作された、犬をかたどった土製品なのだそうです…!🐕
今回は、文学部民族学考古学専攻「犬形土製品」をご紹介いたします。
・イヌはいつから日本にいるのか?
このイヌは、岩手県軽米町君成田遺跡から出土したものなのだそう。
古代から、イヌは人間の生活に身近な存在でした。
イヌと人間の歴史は古く、シベリアやシリアでは三万年前から、東アジアにおいては1万5千年ほど前からイヌの飼育が始まっていました。
ちなみに弥生時代の唐古・鍵遺跡には、犬の歯形付きの土器の破片が見つかっているそうです。
これは恐らく、土器が完成する前に乾燥させている段階で、イヌが歯形をつけてしまった跡なのだそうです。
しかし、弥生時代になると埋葬事例は減り、食用(…!)にした形跡が見られるのだとか…
江戸時代においては、朕などの犬種が高貴な身分の人々の間で重宝されたり、生類憐れみの令が発令されるなど、イヌを大事にする文化があった一方で、依然イヌを食用(…!)にする文化は根強かったようです…
時代ごとに、イヌに対する捉え方の違いが表れていて、興味深いですね。
・日本最古の埋蔵犬骨!?
今回文学部民族学考古学専攻からは、「日本最古の埋葬犬骨」も出展されます。
(今回の二点の関係性は、他の部署に比べて分かりやすいかもしれません…!)
イヌは、縄文時代頃から人の手によって埋蔵されている事例が多く報告されています。
今回出展されている「埋蔵犬骨」の歯牙は生前喪失しており、このことからこのイヌたちは「猟犬」として飼育されていたことが分かるのだそうです。
現代でも、伴侶動物用のお墓などがありますが、この時代からイヌは、人間にとって生活を共にする存在だったのですね。
・縄文時代の愛犬家、クリエイティブな愛情表現?
一方で、「イヌ形土製品」の出土例は少なく、貴重な事例です。
土偶などのように、一定の様式がすでに確立しているものとは異なり、この「犬形土製品」は製作者の技量や感性が十分に発露しているのだそうです。
例えば、イヌが首を右に傾げている表現は、製作者が特定のイヌの仕草を観察した結果であるのかもしれません。
(余談ですが、ヴィクターのロゴの犬のようですね!)
さらに!
この「犬形土製品」の両前肢付け根には貫通孔があり、紐が取り付けられるようになっているため、制作者が家に飾ったり、身につけていた可能性もあります。
現代でも、愛犬がプリントされたお皿やTシャツを作る人がいますが、オリジナルのアクセサリーとして身につけていたとしたら、作者の深い愛情を感じますね💭
・指の跡からわかる…?数千年前の人々の動作
この「犬形土製品」は粘土で作られているため、よく見ると製作時についた爪の痕や窪み、指紋などを視認することができます✋
そして、それらから当時の人々の指の動きを推測することができるのだそうです。
数千年前の人々の動きを鮮明に感じられるなんて、不思議ですね。
「犬形土製品」というタイトル情報にのみに着目すると、爪の跡や指紋などは見落としてしまうかもしれません。
考古的な視点を持ってじっくりとオブジェクトと向き合うと、数千年前の人々の動作を推測することができる、と言うのは新鮮ですね。
この視点を養えば、例えば《ミロのヴィーナス》を見ただけで、作者の腕の動きがわかったりするのかもしれませんね…!すごい…!👀
これぞ、複数部門が連携して「オブジェクト・リーディング : 精読八景」展を開催する醍醐味と言えるかもしれませんね。
(文学部民族学考古学専攻からは、もう一点、ニューギニアの「犬形木製彫像」も出展されます。イヌづくしですね!🐾)
(文責 : 学芸スタッフKeMiCo KOYURI)
「オブジェクト・リーディング : 精読八景」展
会期は8月16日から9月17日
開館時間 11:00から18:00(土・日・祝日休館)です。
ご予約はこちらから
※入場には事前予約が必要です。