古筆切って?古筆家って? ー古筆のキホンー
みなさん、現在開催中のKeMCo展覧会「センチュリー赤尾コレクション × 斯道文庫 書を極める:鑑定文化と古筆家の人々」は、もうお越しいただけましたでしょうか?
「展示は気になるけれど、古筆ってなに…?」「行ってみたいけれど、専門的な内容で難しいのかな…」などと足踏みしている方もいらっしゃるかもしれません。
今回の記事では、「古筆切とは?」「古筆家とは?」といった、本展覧会を楽しむ上できっと役立つ知識をご紹介していきたいと思います!✏️
センチュリー赤尾コレクションって?
まず初めに、「センチュリー赤尾コレクション」についてご紹介します。
センチュリー赤尾コレクションとは慶應義塾のコレクションのひとつで、もともとは一般社団法人センチュリー財団が所蔵していたものです。
「センチュリー文化財団」とは教科書や参考書などで有名な旺文社の創業者(赤尾好夫氏)が設立した財団で、文字文化に関わる文化財の収集・保存や教育・普及活動を行ってきました。 (ちなみに「古筆学」を提唱したのはセンチュリーミュージアムの初代館長、小松茂美博士です!✨)
センチュリーミュージアムが設立された後も精力的に文化財を蒐集し、コレクションは2,325件にのぼりました。
そして、そのすべてが2021年3月、慶應義塾に寄贈されたのです。
「書を極める」展は、このセンチュリー赤尾コレクションの作品を中心に構成されています📝。
(センチュリー赤尾コレクションは、Keio Object Hub からもご覧いただけます👀➡︎https://objecthub.keio.ac.jp/ja/collection/1)
古筆切とは?
「古筆切とは?」という質問の答えの前に、まずは、古筆とは一体どのようなものなのかご紹介します。
古筆とは、古い時代に書かれた筆跡のことを指します。英語では、"ancient calligraphy"などと表現するようです。美しい筆跡は、貴族たちの手本や観賞用などとして重要視されました👀。
「古筆切」は、「こひつぎれ」と読み、古筆の断簡、切られたものという意味です。すなわち「古筆切」とは、もとは書籍の一部であった断片なのです。
「書物を切ってしまうなんて…!」と、ちょっと驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
書物が完全に揃っていない、欠けている場合、その書物の内容全体を読み通すことは難しくなってしまいます。価値が下がってしまった書物はキレイに断裁して、より多くの人々が鑑賞できる「古筆切」という、美術品として生まれ変わることになったのです!💭
現代の感覚からすると、少々不思議かもしれませんが、断簡という形式もまた、書物を愛する人々たちにとって、書を愛で、大切に継承していくための文化だったのですね!
「古筆家」って?
この展覧会のタイトル、「センチュリー赤尾コレクション × 斯道文庫 書を極める:鑑定文化と古筆家の人々」。「古筆家の人々」とは一体、どのような人たちだったのでしょうか。
江戸時代、切手やコインを集めるように、「古筆切」を収集することが人々の間で流行します。そこで、「その古筆は、誰によって書かれたのか」というところが重要視され始めます。
そんな中、江戸時代初期、平澤範佐(ひらさわのりすけ)という人物が、鑑定を学び、その能力が非常に優れていたことから、古筆の鑑定を職業にしました。色々な説もあるようですが、平澤範佐はその能力が認められ、豊臣秀次に「古筆」という姓を与えられ、出家して古筆了佐(こひつりょうさ)と名乗りました。
古筆了佐は古筆家の初代となり、以降代々世襲し、古筆家は昭和に至るまで筆跡鑑定を続けました。
職業に関連した苗字を名乗る文化は古くから存在しますが、「古筆」という苗字を名乗れるなんて、とても素敵ですね…!✨
最後に!
5月14日、「書を極める」展シンポジウム|鑑定とは何か:江戸時代鑑定文化の再評価が開催されました(※画像クリックでリンク先へ移動します)。
こちらのYoutubeリンクから、アーカイブをご視聴いただけます!
また5月23日には、ギャラリートーク|センチュリー赤尾コレクション×斯道文庫 書を極める:鑑定文化と古筆家の人々が開催されました。(※画像クリックでリンク先へ移動します)
こちらもYoutubeリンクから、アーカイブをご視聴いただけます!🏃♀️!
また、今回の記事の内容は、KeMCoのInstagramからも動画でご覧いただけます。(※画像クリックでリンク先へ移動します)
Instagramでは、慶應義塾大学附属研究所斯道文庫教授、佐々木さんの解説付きで、展覧会会場の様子も紹介しておりますので、ぜひチェックしてみてください…!
文責KeMiCo : KOYURI