見出し画像

「Altered Dimension」展 大山エンリコイサム《慶應義塾志木高等学校 壁画》見学会

非公開作品見学のチャンス…!?

みなさま、「大山エンリコイサム Altered Dimension」展にはもういらっしゃいましたか…?

本展覧会に際し、去る11月27日、慶應義塾志木高等学校にて、大山エンリコイサム《慶應義塾志木高等学校 壁画》見学会が開催されました…!

高校の敷地内にある作品ということもあり、もちろん普段は見学することができない作品なのですが、今回の展覧会開催に際し、特別に1日だけ公開されることとなりました🎉

今回の記事では、《慶應義塾志木高等学校 壁画》見学会の様子を簡単にご紹介します📸

《慶應義塾志木高等学校 壁画》って…?

大山エンリコイサムさんの出身高校である慶應義塾志木高等学校(埼玉県志木市にある、慶應義塾の一貫教育校のひとつ)には、大山さんが高校卒業時に学校側の許可を得て、敷地内のブロック塀にエアロゾル塗料を用いた壁画が残っています。

当時志木高には、原宿系ファッションを取り入れたり、高校の敷地の中でスケートボードに乗る学生がいるなど、ストリート系カルチャーが流行していたそうです。

そして大山さん自身が、作品制作に際してプロポーザル(企画書)を事前に作成し、学校の承認を得て制作を開始されたのだそうです。

制作には想定よりも長く時間がかかり、大学1年の夏に完成したとのこと。

いざ、見学!!

参加者は当日、正門で集合してから、KeMCoスタッフ案内のもと、壁画が位置するグラウンドの奥の方へと移動しました。

日曜日ということもあり、学生はほとんどいませんでしたが、引率してくださった先生曰く志木高はとても自由な校風で、学生たちは日々、のびのびと自分の好奇心を追求しているのだそうです。

確かに、学生が高校の塀に作品を残すことができるなんて、志木高の校風ならではの裁量の深さなのかもしれませんね💭

右手には、広々とした志木高のグラウンドが広がっていました

写真右手には、広大なグラウンドが広がっており、参加者はグラウンドの横を通り抜けて突当たりのブロック塀まで歩いて行きました🚶‍♂️

大山エンリコイサム《慶應義塾志木高等学校 壁画》2003年

大山さんの作品といえば、「クイックターン・ストラクチャー(QTS)」という、ストリート・アートから文字や色彩などといった特徴を削ぎ落とした独自の構造体を連想される方も少なくないかもしれません。

KeMCo StudI/Oの《FFIGURATI #314》2020年

大山さんのアーティストとしての活動の最初期ともいえる時期に作成された《慶應義塾志木高等学校 壁画》は、エアロゾルという塗料を用いていること、白・グレー・黒を用いたモノトーンの作品であることなど、現在知られている「大山さんの作品らしい」要素が多く見受けられます。

一方でこの壁画は、現在の大山さんの作品よりも、比較的文字の形態の名残を強く感じることができます。

実はこの壁画は、大山さんが高校生の時によく聞いていたという、アメリカのとあるロックバンドの歌詞の一部がベースになっているのだとか。

《慶應義塾志木高等学校 壁画》の一部

参加者の方からは、「学校の私有地と、公道の境界にあることが大山さんらしい」というコメントもありました…!

保存の難しさ

以上の通り、《慶應義塾志木高等学校 壁画》は大山さんの作家としての出発点を知る上で重要な意味を持った作品です。そして、2018年頃より保存修復のための調査が開始されました。

この作品は支持体がブロック塀という立体構造物である一方、エアロゾル塗料による描画であるという点から、彫刻と絵画の両修復専門家が調査を行なったそうです。

一般的な油絵などに用いられる絵具と異なり、エアロゾル塗料は開発されてからまだあまり時間が経っていないため、適切な保存・修復方法などは手探りで模索しなくてはならない状況なのだとか。

実はこの《慶應義塾志木高等学校 壁画》は、2021年10月から12月に慶應義塾大学アート・センターおよびKeMCoで開催された修復をテーマにした展覧会「我に触れよ(Tangite me):コロナ時代に修復を考える」でも紹介されています。

もちろん壁画そのものをKeMCoまで運んで展示することはできないため、壁画の模型と、作品を撮影した映像を上映するという形で、現代美術の保存修復の難しさについて考える貴重な機会となりました。

「我に触れよ」展 会場風景

慶應義塾の美術品の保存修復についてもっと詳しく知りたい!という方は、「我に触れよ」展記録集をぜひご一読ください!(慶應義塾大学アート・センターとKeMCoにて好評販売中です。)
また、松本工房オンラインショップNADiff a/p/a/r/t(恵比寿)、NADiff contemporary(東京都現代美術館内)、Contrepoint(水戸芸術館 ミュージアムショップ)でもお取り扱いいただいています。
ワークショップ、シンポジウムなどの会期中のイベントまで、レポートを掲載していますので、この機会にぜひお求めください✨

またKeMCoのYouTubeチャンネルでは、慶應義塾大学の講座内で大山さんをお招きして行ったギャラリー・トークの動画も公開中です!

こちらも併せてぜひ、チェックしてみてください!

--------------------
「大山エンリコイサム Altered Dimension」展
2022年10月17日(月)~12月16日(金)
月火水= 11:00–17:00、木金= 11:00–19:00 
[土日祝休館](最終入場は閉館30分前まで)
※特別開館|11月5日(土)、12月3日(土)11:00–18:00
※臨時休館|11月7日(月)、12月5日(月)
慶應義塾ミュージアム・コモンズ(三田キャンパス東別館)
どなたでもご覧いただけます

展覧会詳細リンク

文責 : KeMiCo KOYURI


みんなにも読んでほしいですか?

オススメした記事はフォロワーのタイムラインに表示されます!