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roomxみどころ② 佐々木孝浩教授による「短冊手鑑」解説動画・画像(ページ)

オンライン展覧会「Keio Exhibition RoomX: 人間交際」より、「みどころ」コンテンツを紹介していく連載2回目。今回は、慶應義塾大学附属研究所斯道文庫長の佐々木孝浩教授による解説動画および画像(ページ)をご紹介します。

本noteで取り上げるのは、「短冊手鑑(たんざくてかがみ)」と呼ばれる書物になります。詠者自筆の短冊—和歌が詠まれた紙—が計533枚も貼り込まれており、他に類のない "作品" となります。どうぞお楽しみください。


「短冊手鑑」とは?

公式な歌会では懐紙に和歌を記したが、通常の会や私的な会では紙を細長く切った短冊(たんざく)が使用された。平安の記録に見えるが、現存するのは鎌倉後期からである。古くは素紙の白短冊であったが、室町初期から上に藍、下に紫を漉き加えた雲紙(くもがみ)を公式料紙として用いるようになった。これは、大ぶりの折帖に、表に264枚、裏に269枚の計533枚もの短冊を貼り込んでいる。鎌倉後期から江戸初期に及び、数枚の漢詩と発句もある。筆跡の見本集を「手鑑(てかがみ)」と呼ぶが、これほど大きな短冊手鑑は類を見ない。通常の手鑑は、筆者の身分と時代で貼り並べるが、桐箱蓋に「上之短冊次第不同ニ押」と墨書されるように、その法則は守られていない。加賀前田家旧蔵と伝えられ、足利将軍他の著名人の短冊が多く、筆跡の様々はもとより、多彩な様式の短冊を見いだせる。格の高い雲鶴文の古錦を用いた表紙も見事である。大きさ、40.0×22.4×12.7㎝。


みどころ: その1

類例のない厚みと枚数を有する「短冊手鑑」で、これ1帖で室町時代の基本的な書道の流派を確認できます。筆者が異なるのに字が似ているのは、書道の流派が共通しているのです。似た筆跡を探している内に、室町時代の書流に詳しくなるかもしれません。通常は1人1枚が法則に従って貼られていますが、これはその法則が破綻していて、同一人のものが離れた場所に存在していたりします。気に入った人物のものが何枚あるか、数えてみるのも楽しいのではないでしょうか。 

↑佐々木教授が「冬の歌」を2点、選出して解説しております

みどころ: その2

↑臨済宗の歌僧「正徹(しょうてつ)」による歌を4つ、
高画質画像 + 佐々木教授による解説でお楽しみいただけます


さらに詳しく知りたい方・他の作品もご覧になりたい方は、展覧会の斯道文庫セクション「歌会・連歌会に集う人々」に、ぜひお越しください。

日本古典文学の中心的な存在である和歌は、長きにわたって多くの歌人達によって、様々な場で詠み出されてきた。創作は孤独な営為のように思われがちだが、古典和歌においては、その詠出は人々が集う場でなされるのが公式な方法であったのである。その場が歌会や歌合である。 主催者の呼びかけで集まった歌人達は、詠作の場を照覧する歌神像の前で、用意してきたものやその場で詠じた歌を声に出して詠み上げ、時にその巧拙を論じ合うなどして、心を合わせ通わせてきたのである。また和歌から派生した連歌は、複数の人物で合作することを前提とする文芸であるので、連歌会の場はとりわけ尊重された。 このコーナーでは、歌会や連歌の場に掲げられていた神像や名号、そこで詠まれた歌や句の詠者自筆の懐紙や短冊などを通して、文芸を通じた人間交際の有り様の様子を実感していただきたい。