新人学芸スタッフが、展覧会に行ってみた🏃‍♀️ [完結編] ーKeMCoの精読八景、 どう楽しむ?ー
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新人学芸スタッフが、展覧会に行ってみた🏃‍♀️ [完結編] ーKeMCoの精読八景、 どう楽しむ?ー


皆さんこんにちは。

慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)の新人学生学芸スタッフが、8月16日から開催中の展覧会「精読八景」を鑑賞してきました。

その様子を心の声多めでレポートしていきます。💭

前回の記事では、展示室に置かれた「八景ピース」なる、謎解きシートについてご紹介しました。
「八景ピース」を使って、ゆるゆると展覧会を楽しむ様子をお伝えしましたので、気になる方はコチラをご覧ください。

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さて、そもそも展覧会「精読八景」とは…

同じモノ(オブジェクト)を見ていても、その読み解き方は人によってさまざまです。・・・本展に並ぶ不思議な組み合わせのオブジェクトは、モノをどう読み解くのかを、謎かけのように問うています。(詳しくはコチラ

というもの。
鑑賞者それぞれの、自由な発想と探偵のような心をくすぐるアイデアがたくさん詰まった展覧会でした。🕵️

今回の記事でも引き続き、全部で8枚ある「八景ピース」の謎かけに挑んでいこうと思います。残り5枚もあるので前回よりサクサクといきます。

八景ピース④

さて、4組目の作品たちはコチラの2作品。(1〜3組目はコチラ

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(手前の作品)土方巽 舞踏譜《なだれ飴》(1972年)
(奥の作品)ジグマール・ポルケ《リトマス》(1999年)

どちらも20世紀の作品です。
八景ピース」によると、2つの作品を結びつけるキーワードは「動き」🏃‍♂️。

土方巽とは「舞踏-Butoh-」と呼ばれる踊りのジャンルの、いわば創始者で、彼の踊りは「暗黒舞踏」とも呼ばれるのだそう。

(確かに「暗黒」という言葉がしっくりくるように、私は感じました。
展示会場「Room2」で動画が流れていたので是非みて欲しいです…!)

今回出品されたのは、土方による「踊りの指示書」。
土方はイメージする踊りを、超有名な絵画作品に書き込みながら、説明しています(下の写真)。
クリムトの作品も指示書に登場するので、絵画好きには堪りませんね…🤤

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もう一つの作品は、ジグマール・ポルケというドイツ人画家の作品。抽象的な作品で、描かれた人や物の躍動感がすごい。

土方の作品もジグマールの作品も、どちらも自らを絞り出すような表現が観る人の心を動かします
「八景ピース」のテーマ設定、「動き」というワードの的確さには驚きです。

八景ピース⑤

次なる作品たちのテーマは「生命の記憶」。
テーマに沿って作品鑑賞をしてみようと思います。

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(手前の作品)「唐蘭船持渡鳥獣之図」より「獣類之図」(江戸時代中〜後期)
(奥の作品)「エドガー・アラン・ポーの遺髪入りペンダント、肖像」「セアラ・ヘレン・ホイットマン夫人 肖像」(19世紀)

まずは、こちらの象の作品。

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いい表情ですね…ずっしりとした体つきも超リアル。
複数の紙に分かれているのは一体なぜ…?

どうやらこちらの作品、からくり絵なんだそう。いろんな表情をした象を好きに選んで、体と繋ぎ合わせて遊ぶんだとか。
子供向けだったのでしょうか…?それにしてはリアルすぎるかも…?(笑)

ちなみに、展示会場を出てすぐの「Room2」ではパネルを操作して、からくり絵の疑似体験ができました!

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タッチすると、顔が変わっていくのですが、私が好きな表情はこちら。
どやっ…!とした感じが可愛らしい。

この作品が作られた18世紀後半-19世紀に、中国やオランダから象などの珍しい動物がたくさん日本にやってきたのだそう。

象のいろんな表情が楽しそうに描かれていて、当時のワクワクした気持ちが伝わってきますね。人々を賑わせた、楽しげな象の「生命」を感じます。

もう一点は、エドガー・アラン・ポーに関する作品たち。

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この偉大なる作家に関する「八景ピース」の解説はこちら。

…19世紀アメリカ作家エドガー・アラン・ポー…は世界文学史上における探偵小説の創始者として広く知られ…今日の現代文学にまで多大な影響を及ぼした文豪である。…

ポーについてあまり多くを知らないなぁ…と思いながら調べてみると、
日本人推理作家の江戸川乱歩(1894-1965)はそのペンネームを、ポーの名をもじっていたということを知りました。
探偵小説の創始者、ポーに挑むかのようなペンネーム。かっこいいです。

展覧会に来ると、知らないことにたくさん出会います

八景ピース⑥

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 続いてはこちらの作品たち。

(上の作品)「柿本人磨像」(南北朝時代〜室町時代初期、14世紀)
(下の作品)「短冊手鑑」(南北朝~江戸時代前期)

急に日本っぽくなってきました。🎋
上の作品に描かれた、柿本人磨(かきもと の ひとまろ)は7-8世紀ごろの飛鳥時代の万葉歌人なのだそう。

下の作品には、細長い紙たち(短冊)がズラリッ…
雲紙 -くもがみ-」と呼ばれる漉き模様で、上を青下を紫で染めるとても伝統的なものだとか。

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洒落た色合いですね。
ただ、こういう古風な作品って「きれい」とか「ステキ」という以外に、どう鑑賞を楽しむんだろう
と考えていたら、壁に丁寧な解説があることに気づきました。

名称未設定のデザイン.jpgのコピー

ジグザグな形をした「折本」は、丈夫だから両面とも使えるとのこと。
確かに…よ〜く見てみると、裏側にも文字がありますよ!
これは解説がないと気がつかなかったなぁ…

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(画像だと伝わりにくい…😖是非実物を見て確かめて欲しいです)
こういう小さな発見に出会うと、探検している感じで楽しいです。

八景ピース⑦

さて、この展示室内最後の八景ピース。🗻
これら二つの作品を繋ぐテーマは「『公』と『私』の古文書」です。

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(奥の作品)石川總茂、朽木稙元「領地目録」(享保2年、1717年8月18日)、徳川吉宗(原本制作者)「朱印状(写)」(享保2年、1717年8月11日)
(手前の作品)尾崎石城「石城日記」(文久元年、1861年ー文久2年、1862年)

一つ目の作品は、「領地目録」…。うーん、どう鑑賞すればいいんでしょう…?

解説を読んでみると、七万石の領土を徳川吉宗(八代将軍)が治めていることを証明するものだそう。
七万石って、どのくらいなんでしょう…

調べてみると「石」はお米の収穫量の単位で、「一石」は大人が1年に食べるお米の量にほぼ等しいようです。

Room2に置かれていた「徳川幕府事典」によると

「…「石高」という米の収穫量で、生産力を統一的に把握した。…等級ごとに定められた石盛(一反 [=広さの単位] 当たりの標準収穫量)を、丈量した田畑の面積に乗じて生産高を算出した。」

とありました。そして、「一反」の田んぼでほぼ「一石」が収穫できるのだそう。
「一反」の面積が、約300坪らしいので…

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う〜ん…、頭がパンクしてしまいそうなのでここでギブアップ。💥
…正確な広さを測るのは難しそうですが、相当広い領地だということがわかりました!(計算が得意な方は、ぜひ教えてください!)

では、次の作品に進みます。(笑)

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石城日記」の名で知られる絵日記
実は今回の展覧会で、一番気に入っている作品です…!

描かれたのは江戸時代、幕末の頃。呑み喰いを楽しむ人々が描かれています。
下級武士だった尾崎石城が、副業として絵描きもやっていて、なかなかの人気を博したのだそう。

こちらの作品の魅力は、何と言ってもゆるさと細かさのバランス!だと思いました。

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棚をものすごーく丁寧に描いていると思いきや、一方で猫は程よいゆるキャラ感があります。
肩の力が抜けた、プライベートな日記だからこそ見られる魅力なんですね、きっと。

そういえば「八景ピース」のテーマは「『公』と『私』の古文書」でした。
一つ目の領地目録は「(パブリック)」の文書で、二つ目の絵日記が「(プライベート)」の文書ということだったんですね。

どちらも当時の江戸文化を生きた人の姿を思い起こさせます。古文書にこんなロマンがあったとは、驚きでした。

最後の八景ピース!⑧

さて、ここまで7つの「八景ピース」に挑んできました。

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色々考えながら進めていくと、どんどん埋まってくるものですね。
展示室を出ると、最後の「八景ピース」を発見。その隣には「Room2」と呼ばれる部屋があります。

オブジェクトを読み解くために、あなたならどんな問いを投げかけますか?
<オブジェクト・リーディング:精読八景>展覧会シート」(KeMCo)
精読のラウンジ」(KeMCoとKeMCoM)
テーマ:「人間交際

なるほど…
最後は展覧会のシート(パンフレット)と、精読ラウンジ(=Room2)について精読していくんですね。最後なので気合を入れていきます。

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なんともモダンな空間!と驚きながら
おじおじと入ってみると、とっても楽しげな棚が…!

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これまで観てきた作品に関連する本や映像が盛りだくさんです。
「八景ピース」を通じて、かなり時間をかけて鑑賞していたので、その想い出がフラッシュバックして、感動的…

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そしてお気に入りの「石城日記」の一場面の模型と、本がありました!
ちなみにこの作品、学生スタッフのKeMCoMの人たちのお手製なのだとか。
完成度が高い…!

「八景ピース」を残す

「精読ラウンジ」を堪能していると、
学生のスタッフさんから「八景ピースを会場に残せるんですよ」と声をかけられました。
「八景ピース」を手渡すと、手際よくスキャンを済ませて…

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すると…私の「八景ピース」たちがこんなに大きく表示されました!

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他にも、これまで来場した人たちの「八景ピース」があり、
他の人たちがどんなことに目を向けて鑑賞しているのかが見れるので、新鮮でした。

さて、最後の「八景ピース」を書いていこうと思います。

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・「精読ラウンジ」はどんな場所か?
→ これまでの「八景ピース」を振り返る場所なのでは?
→ 振り返って見えてきた展覧会のテーマとは?
▶︎ 「作品の作り手やその時代に、想いを馳せる

書き終わりました。
そういえば、受付でもらっていた「展覧会シート」に、全てのピースをさし込むことができるのだそう!

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手作りカタログ」ができました。想い出になりますね。

これにて展覧会での全ての体験を終えました。
新しい発見や知識にたくさん出会って、頭を久しぶりにフル回転させたので、この後はゆっくりお茶をしたいと思います。

とっても充実した展覧会でした。
ここまで読んでいただいて、どうもありがとうございます。
また次の展覧会で、ゆるゆるとレポートできたらなと思っています。

(学芸スタッフKeMiCo 万里子)

慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)は、2021年4月にオープンした慶應義塾の大学美術館です。このnoteでは、KeMCoの所員やスタッフがミュージアムやアートに関わる話題を幅広く展開します。「我に触れよ(Tangite me):コロナ時代に修復を考える」展10/18〜