新人学芸スタッフが、展覧会に行ってみた🚶♀️ ーKeMCoの精読八景、 どう楽しむ?ー
こんにちは。
新人の学生学芸スタッフが、つい先日、展覧会「精読八景」を鑑賞してきたので、その記録を心の声多めでレポートします💭
8月中旬、最近は雨が続いて少し寒いし、なかなか外に出る気にならない…
太陽がないと、気持ちが悶々としてしまいますね。
そういえば、16日からKeMCoの新しい展覧会が始まったと聞いたので…
気分転換に行ってみようと思います。
展覧会の概要によると、謎解きのように鑑賞を楽しめるそう。
同じモノ(オブジェクト)を見ていても、その読み解き方は人によってさまざまです。・・・本展に並ぶ不思議な組み合わせのオブジェクトは、モノをどう読み解くのかを、謎かけのように問うています。(詳しくはコチラ)
まずは受付から
受付で、検温・消毒をしてボードと鉛筆、シートを受け取りました。
展示室で使うみたいです。ワクワク
受付が済んだので、3Fの展示会場に階段で向かいます。🚶♀️
見晴らしの良い階段だなぁ、プロジェクションに遊び心を感じるなぁ、
と思いながら、ふと後ろを振り返ったら、こんなところに立像が。
ずいぶん大胆なところに展示してありますね。宙に浮いているかのよう。
「増長天立像」平安時代(12世紀)
Keio Object Hubによると、南方を守護する護世神なのだそう。よく見ると何かを踏んでいますね…!
さて、展示室に向かっていきます。3Fに着きました。
展示室に到着
「オブジェクト・リーディング:精読八景」
オブジェクトを読んで、八景を精読する…ということなのでしょうか?
壁には、こんな解説があります。
展示室には、参加する部署ごとに一つ、「八景ピース」と名付けられた細長い紙片が置かれています。各一部を手に取って、8枚の八景ピースを揃えてください。…
なるほど。
それぞれの紙には、作品鑑賞を楽しませてくれるヒントや質問も書いてあると、受付でもらった展示ガイドにも書いてありました。探偵になった気分でやってみようと思います。とりあえず入ってみます。
八景ピース①
(上の作品)永島芳虎「東台大戦争図 明治元戊辰年五月十五日図」
(下の作品)福沢諭吉「見松院様御嘆願口上之覚」
入ってすぐ右手の展示ケースがこちら。
作品の右側の壁に「八景ピース」らしき、縦長の紙片を発見しました。
八景ピースを見てみると…
「抵抗と恭順」
並べられた二つの作品のテーマみたいです。そしてこんな質問が書いてあります。
オブジェクトを読み解くために、あなたならどんな問いを投げかけますか?
うーん、なかなかざっくりとした質問…
と、そこで諦めず、展示された作品を見て、ぷかぷかと思い着いたことをどんどん書いていってみます。
・そもそも、どうしてこの二つの作品が並べられているのか?
・もしかすると時代が同じくらいだからなのかも?
・そういえば二点とも横長で、ツギハギされてるなぁ…
・どうしてツギハギされているんだろう…
気づけば色々疑問が出てきました。
頭に浮かんだ疑問を、忘れないように「八景ピース」にメモしておきます。
もっと作品の情報が欲しいな…
と思っていたら、「八景ピース」の裏側に丁寧な解説が書いてあることに気がつきました。
メモに夢中になると、意外に気付かないものですね。
「東台大戦争図 明治元戊辰年五月十五日図」の解説を読んでみると、
… 江戸市内が騒然とする状況下で、福沢諭吉は2里(約8km)程はなれた芝新銭座の慶應義塾において時間割り通り講義を続けたのである。
すごすぎる… さすがは諭吉先生。
勝手に「ペンは剣よりも強し」という格言を思い出してしまいました。
(慶應義塾史展示館のコチラです)
脱線してしまいました。
いろんな事に思いを巡らせているうちに、「八景ピース」が埋まってきました。
最初に思い浮かんだ疑問、
どうしてこの二つの作品が並べられているのか?
うーん…、そういえば、
一つ目の作品では、武力(剣)によって対抗する姿が描かれていて、二つ目の作品は筆(ペン)によって嘆願した記録でしたね。
何かを成し遂げるときの手段に「剣」を使うのか、「ペン」を使うのか。
もしかすると…!
「ペンは剣よりも強し」のメッセージが、並べられた作品に込められているのでは…!? おぉ〜…
と一人で盛り上がっていました。
「八景ピース」楽しいですね。一つ問いかけられるだけで、どんどん発見が出てきます。
八景ピース②
次に進んでいきます。
(右の作品)曲亭馬琴/ 葛飾北斎「鎮西八郎為朝外伝 椿説弓張月」
(左の作品)アルブレヒト・デューラー《四人の魔女》
と、どちらも版画。次なる「八景ピース」も発見しました。
日本(東洋)の版画と、ドイツ(西洋)の版画。
なかなか東西の版画、しかも北斎とデューラーという超豪華な組み合わせを並べて鑑賞できるとは…贅沢ですね。🤤
解説によると…
… 保元の乱で伊豆大島に流罪となり自害した平安の武将・源為朝が、その後も長く生きながらえて活躍するという伝奇物語であり、ヒーローの活躍を多彩な登場人物を織り交ぜて活写する。…
ヒーローがバケモノを退治する物語、だそうです。
バケモノをどう描くかって、芸術家のこだわりとか、妄想力(笑)が見られるので楽しいですよね。
北斎のバケモノはこちら。
お〜…
なかなか気合いの入ったバケモノですね。不気味さと滑稽さがミックスされた表現がたまらないですね。
さらにバケモノとのコントラストで、ヒーローがより格好良く見えます。
一方、デューラーの作品はこちら。
裸の女性が四人並んだ作品。じーっくり見てみると…
バケモノを、こんなところに発見!
いいですね。私の好きなタイプのバケモノです。
いかにも悪そうな表情と、躍動感のある口元、なかなか見つからない所に居るからこそ、見つけた時の密かな達成感があります。
バケモノの描写には、芸術家それぞれの遊び心が感じられるので楽しいですね。
色んなことに気付き始めたので、「八景ピース」を埋めていくと…
こんな問いかけがありました。
オブジェクトに名前をつけてみよう!
(曲亭馬琴/ 葛飾北斎「鎮西八郎為朝外伝 椿説弓張月」)
名前つけてみる…
確かに、「鎮西八郎為朝外伝 椿説弓張月」と言われても、なんだか難しくてよく分からない。
源為朝がヒーローとして活躍する作品で、バケモノの存在も印象的だから…
「華麗なる英雄・為朝〜怪物に挑むの巻〜」
とかどうでしょう?微妙な気が…
昔の絵を見ると、どうしても「〜の巻」と付けたくなってしまう。
もう少し洒落たタイトルにしたいのですが、今の所思いつかないので、考えながら次に進んでいこうと思います。
八景ピース③
さて、次の「八景ピース」のテーマは…
時空を超える人と犬の関係性
面白そう。そしてオシャレな題目ですね。
こういうタイトルを目指したいと思います。
今回は三つの作品がひと組になっているみたいです。
(右の作品)「犬形土製品」(縄文時代晩期)
(左作品)「犬型木製彫像」(1930年代 収集)
(手前の作品)「日本最古の埋葬犬骨」(縄文時代早期末 BC5500-5300年頃)
全部「イヌ」!
縄文時代の犬…については、さすがに考えたことなかったですね。どんな犬だったんでしょう。日本犬の祖先ということですよね、強そう。
八景ピースの問いに答えていきます。
オブジェクトを読み解くために、あなたならどんな問いを投げますか?
オブジェクトに名前をつけてみよう!
(「犬型木製彫像」、1930年代 収集)
今度こそ、洒落たタイトルにしてみたいです。
投げかける問いも、作品のタイトル付けを目指して考えていきます。
・犬の姿を形作ろうとするというのは、相当の犬好きだったんだろうなぁ。
・縄文時代の犬の仕事はなんだったんだろう。猟犬とか…?
・犬の骨が遺っているってことは、犬を埋葬してたってことだよなぁ。
・犬はその時代から、ヒトにとって大事な存在だったということ?
・そういえば、土製の犬(手前)には小さな穴で模様があって、木製の犬(中央)にも黒い模様があるなぁ。
・どちらも愛犬の特徴だったのかな。
色々と考えが膨らんできたので、「犬型木製彫像」にタイトルをつけていきます。
このオブジェクトの解説には、
… 松江氏は1932年、ニューギニア北西岸の視察旅行に出かけており、そのときの収集品と伝わる。… ニューギニアでは、身近な動物たちが特定氏族の神話的来歴に結びつく。犬もそうしたトーテム動物の1つである。…
とあります。へぇ〜…
ちなみにトーテム(totem)とは、ある民族に特別な意味で結びつけられた、象徴的な動植物とか自然現象とかのことを言うらしいです。
さて、名前をつけていきましょう。
ニューギニアの民族の神話で、大事な役割を担っていたはずの犬…
黒の水玉模様…(犬の柄ではスポットというらしいです)
「スポット柄の犬 〜時空と民族を超えて〜」
とかどうでしょう?
だいぶ「八景ピース」のテーマに引きずられてしまいました。(笑)
次回は…
「新人学芸スタッフが、展覧会に行ってみた🚶♀️ ーKeMCoの精読八景、 どう楽しむ?」では、心の声多めで、ゆるゆるとレポートしました。
「八景ピース」はまだ5枚残っていますので、第2回目以降の記事で紹介していきます。
また楽しくお伝えできたらいいな、と思っています。
(学芸スタッフKeMiCo 万里子)