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展覧会、どこを見る?①持ち主チェック篇@KeMCo新春展2025「へびの憩う空き地」

新しい一年、今年は美術館に行ってみるぞ!今年もたくさん行くぞ!と決意を新たにされた方も多いはず(そうであってほしい)。斯く言う筆者もその一人です。
今年の目標に美術館が少しでも浮かんでいるのなら、善は急げ🔥!!年始早々、行ってみるしかありません!思い立ったが吉日!鉄は熱いうちに打て!

とはいえ、ちょっとハードルが高いかもしれません。そこで、KeMCoで開催中の新春展2025「へびの憩う空き地」(以下、「へび展」)を舞台に、美術史修行中・KeMiCoスタッフの筆者オススメの展覧会チェックポイントをいくつかご提案します。
今回は第一弾、持ち主チェック篇です。


へび展会場の様子

作品の持ち主は誰?

展覧会会期中の現在はKeMCo3階展示室に並んでいる作品たちですが、すべてがKeMCoの持ち物(所蔵作品)ではありません。

開催情報を見てみよう

特に新春の干支にまつわる展示では毎年、慶應義塾内の各所から作品をお借りしています。

主催|慶應義塾ミュージアム・コモンズ
協力|慶應義塾大学アート・センター
・・・慶應義塾大学文学部古文書室
・・・慶應義塾大学附属研究所斯道文庫
・・・慶應義塾福澤研究センター
・・・慶應義塾大学三田メディアセンター
・・・慶應義塾大学文学部民族学考古学専攻
・・・慶應義塾大学信濃町メディアセンター
・・・慶應義塾大学日吉メディアセンター
・・・慶應義塾大学文学部美学美術史学専攻
・・・慶應義塾幼稚舎サイエンスミュージアム
・・・慶應義塾中等部
・・・慶應義塾女子高等学校

KeMCoが主催する展覧会ながら、慶應各キャンパスのメディアセンター(図書館)、研究所、専攻、小・中・高という関係機関が名を連ねていることがわかります。今回の展覧会ではここにある12の機関のご協力によって、作品🐍が集まってきているというわけです。
(慶應義塾女子高等学校は作品借用ではなく1Fのコラボレーション展示にご協力賜りました)

ほかの展覧会でも主催/共催/協賛/協力などの関係機関を眺めてみると、関係性や誰の思いでこの展覧会が動き出したのか…?が浮かび上がってくるようで想像が広がるのでオススメです。

とんでもない「個人」がいる

関係諸機関も気になるのですが、もっと気になるのは「個人蔵」。英語にして”Private Collection”。

キャプションに神々しく記載された「個人蔵」の文字に気づいてしまったが最後、なぜ…なぜこれを個人でお持ちでいらっしゃるのかしら…なぜそれをお持ちでいらっしゃることが美術館に知られたのかしら…と心の中でざわめきが起こります。

KeMCoで見かける「個人蔵」は大学の先生方や大学機関にお勤めの方のお知り合い、なんてことも多いような少ないような、やっぱり多いようなという噂を耳にします……👂
両手に収まらない数の関係機関から作品を借りてきている今回のへび展、「個人蔵」も思いのほかさまざま出品されています!

キャプションがぼやけていてもなお存在感を放つ「個人蔵」

どこに情報がある?

展覧会で作品の横によく置かれている/貼られている、作品情報の記載を「キャプション」と言いますが、作品の持ち主情報は作品名と一緒に書かれることがほとんどです。

キャプション↑

同じ作品名を持つモノが複数あった場合、そのモノを特定するためにも所蔵先が非常に重要だったりします。

出品リスト↑

会場で配布される出品作品リストにも同じく作品情報として「所蔵」の欄に記載されます。
最近はWebサイトにリストが掲載されることも多いですね。へび展の出品リストもWebからチェックできます👀(「主な出品作品」下の「出品リストはこちら」をクリック)

モノがそこにある不思議

作品の「持ち主」には展覧会主催者の持ち物だけでなく、関係する美術館・図書館・研究所や個人がいることがわかったところで、実際に「持ち主」を意識しながら実際に展示作品を見てみましょう✨

慶應幼稚舎サイエンスミュージアム蔵☞《アオダイショウの骨格標本》《アオダイショウのアクリル封入標本》

まずは慶應幼稚舎からの2点です。骨だけを残された標本とアクリルに入って姿を残した標本の二種類があります。

しかもこのへび、「産地」が…「東京、幼稚舎」って書いてある…あわわ…幼稚舎にへびが出たんですね…すごい対処法…冷静に骨を採るのね…あらららら…

アクリル入りのへびさんも幼稚舎に出没し、捕らえられたんだそうです。
あらまあ、、、

個人蔵☞《へびの抜け殻》

鱗だ…

中身の骨が展示されていると思ったら抜け殻もありました。

展示場所もちょっと珍しく、見上げて楽しむスポットになっています。

へびの抜け殻は開運アイテムなのだそうです。見つけることなどそうそうないですが、恩恵にあやかりたいものですね…そんな貴重な開運アイテムを貸してくださる太っ腹さもすごい。

個人蔵☞《蛇紋岩》

表面の紋様がへびの鱗模様のように見えることから「蛇紋岩」と呼ばれるこの石。かんらん岩が水と反応して変質することによってできる模様なのだそう。ちなみに、この岩がある場所は地滑りなどに注意する必要があるようです(やわらかい地盤ということだそう)。

個人蔵☞《へびの装飾品》

ジャンルがあまりに多岐にわたり、予想もつかない「個人蔵」作品ですが、キラキラ(ギラギラ)の装飾品もあります。

ファビュラスなお衣装のときにつけるんですかね…!

慶應義塾大学文学部民族学考古学専攻☞《マランガン儀礼用装飾板》

展覧会を控え、慶應内各所のへび探しをしていた段階で案外民族考古学専攻の所蔵資料にへびが見当たらない!と話題になっていたのですが、無事(⁈)発見され、展示に至りました。魅惑のメラネシア民俗資料!

某アーケードゲームのキャラクターのようなかわいらしさ

慶應にこういったものが所蔵されているなんて、筆者が大学受験生だった幾年前には全く思い至りませんでした👀

慶應義塾図書館☞スネイク(おもり)

まさかこんなものも出ているとは…こちらはへびの名を持つおもりです。筆者も美術図書館で貴重書の類を見せていただくときに、文鎮として貸していただいたことがあります。日本語では紐状文鎮とかなわ文鎮の名前で販売されていたりもするようですが、「へび」呼びは東西共通らしく、”Snake book weight”と検索すると使用中の写真もいろいろ出てきます。
たしかに自由自在な形状がへびっぽい。
メディアセンターから借りたものの中にある種の日用品が混ざっていることに心の中でいいね!を押した一幕でした。

作品が作品を呼ぶ、らしい

所蔵先のことを考えるとき、筆者は一昨年秋の展覧会「常盤山文庫×慶應義塾 臥遊-時空をかける禅のまなざし」を思い出します。
展示場所を持たない常盤山文庫コレクションの寄託先となっている九州国立博物館、東京国立博物館、そしてKeMCoという4つの機関の学芸員が集ったシンポジウムでは、あるコレクションが形成されていくとき、最初はコレクター(持ち主)の意向が強く反映されているとしても、「作品が作品を呼ぶ」ことで集まっていく作品傾向があるというお話が出ました。

詳しくはこちら⇓

また、先日長期休館に入られた出光美術館で昨年秋に行われた展覧会「出光美術館の軌跡 ここから、さきへⅣ」の副題、「物、ものを呼ぶ—伴大納言絵巻から若冲へ」も思い出されます。

ある作品を持っていることがご縁となって、関連する作品が集まり始める——そして慶應各所に所蔵されている蛇たちも、そもそも蛇を集めたい!というモチベーションで集まったわけではないけれど、KeMCoが開館し新春展が開催されることになったために集合している。そんなご縁の集合体を展覧会に読み取ることができるのではないでしょうか。

おわりに

展覧会にせっかく出かけたけれど、何を見ていいかわからない、正直共感できない、などと困惑した経験が一度や二度ではきかない筆者ですが、展覧会を重ねるうちに、また、いろいろと皆さんのお話を伺ううちに、どうやらいくつか視点があるらしいことが見えてきました。
ここを見ておこう!というチェックポイントを二、三個持っておくと、自分の知らない分野の展示に出会った時にも手持ち無沙汰にならずに楽しんでいける気がします。

にょろりとしたへび🐍は必ずしも万人受けの人気者ではないかも(?)しれませんが、だからこそ楽しめるポイントも沢山あります🔥ということで、まずは「持ち主チェック」というチェックポイントのご紹介でした。よかったら試してみてくださいね。


🐍KeMCo新春展2025「へびの憩う空き地」🐍
日付:2025年1月9日(木)~2月7日(金)
11:00–18:00 土日祝休館
特別開館|1月18日(土)、2月1日(土)
臨時休館|1月20日(月)、2月3日(月)
場所:慶應義塾ミュージアム・コモンズ(三田キャンパス東別館)
対象:どなたでもご覧いただけます(事前予約不要)
費用:無料
主催:慶應義塾ミュージアム・コモンズ
協力:慶應義塾大学アート・センター、慶應義塾大学文学部古文書室、慶應義塾大学附属研究所斯道文庫、慶應義塾福澤研究センター、慶應義塾大学三田メディアセンター、慶應義塾大学文学部民族学考古学専攻、慶應義塾大学信濃町メディアセンター、慶應義塾大学日吉メディアセンター、慶應義塾大学文学部美学美術史学専攻、慶應義塾幼稚舎サイエンスミュージアム、慶應義塾中等部、慶應義塾女子高等学校
同時開催☞ふとした点景—— 岡崎和郎
場所:慶應義塾ミュージアム・コモンズ(2階 階段踊り場)

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文責:KeMiCo Honoka