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担当学芸員が描いてみた👩🏼‍🎨🎨「臥遊(がゆう)―時空をかける禅のまなざし」作品見どころをチェック✅

はじめに

現在慶應義塾ミュージアム・コモンズでは、展覧会「常盤山文庫×慶應義塾 臥遊(がゆう)―時空をかける禅のまなざし」を開催中です🌼🐤

【慶應義塾ミュージアム・コモンズ展覧会】
常盤山文庫×慶應義塾 臥遊(がゆう)―時空をかける禅のまなざし

大好評🎉開催中😀

本展覧会は、常盤山文庫コレクションと慶應義塾の収蔵品より、禅宗の美術を紹介します。
でも、「禅宗?」「作品のどこを見ればいいの?」「難しいんじゃ…😥」など、ちょっととっつきにくさを感じてしまう方もいるかもしれません😖💦(かくいう筆者も…)

今回の記事ではそのような方たち、そしてそうじゃない方たちにも!
担当学芸員が描いた、ちょっとゆるかったり、全然ゆるくなかったり(すごい観察眼😆)するイラストとコメントで、出品作品の見どころ🔍👀を解説します💪🏼


海棠白頭翁図

祐周筆「海棠白頭翁図」、室町時代(16世紀)、常盤山文庫所蔵(慶應義塾寄託)

【学芸員コメント💬】
どんなふうに描かれているのか、イラストを描いてみると気づくことが多いです。
羽毛の細かな筆致、鳥の体躯を表現する技術の高さや、幹は水墨画らしい抑揚のある線描で、海棠の部分は、白色に、桃色や黄色も使われていて、意外と厚塗りです。
海棠の葉は、緑色の顔料が剥落して、白っぽい色が見えていますが、下地に胡粉が塗られているようです。中国画に学びながら、日本で培われた描法で描いているように見えます…
白頭翁(ムクドリ)の絶妙な表情と、海棠の可憐さがおすすめポイントです。

猿猴図

和玉楊月筆「猿猴図」、室町時代(16世紀)、常盤山文庫所蔵(慶應義塾寄託)

【学芸員コメント💬】
最初に言うのも…ですが、イラストだとおすすめポイントが再現できず、この作品は墨と紙の質感が魅力だと気づきました。お猿の毛並みのふわふわ(ごわごわ?)を実物でご覧ください。
簡単に描いているように見えましたが、猿猴の表情は絵師それぞれの個性が如実に現れています。似た様な手長猿を描いた猿猴図は数々ありますが、描き方も目鼻立ちもそれぞれ異なるので、他の絵師の猿猴図もぜひ探してみてください!お猿の顔は、絵師の顔に似ているのではないかと想像(妄想)しています。

楓橋夜泊図

秀盛筆、雪心等柏賛「楓橋夜泊図」、室町時代(15世紀)、常盤山文庫所蔵(慶應義塾寄託)

【学芸員コメント💬】
こちらの絵はかなり実物も小さいものです。タブレットで拡大しながら描いたので、実物より細部を描き込める状況で、いろいろ気づきました。塔のある山が急で、しかも道が描かれていること、家屋のなかはカーテンが開いていて、人影があるようです。
楓橋夜泊の詩を絵画化している点は、楓の葉らしい紅葉した木が中央にあること、橋とその袂に停泊する二艘の舟、塔(寒山寺)などの景物から分かります。漢詩の解釈では時刻がいつなのかが論点になっていましたが、絵画は夜半なのでしょうか、明け方でしょうか。詩のなかの物語を想像しながら見るのがおすすめ鑑賞方法です。

鉄拐仙人図

秋月等観筆「鉄拐仙人図」、室町時代(16世紀)、常盤山文庫所蔵(慶應義塾寄託)

【学芸員コメント💬】
鉄拐仙人は魂を肉体から離して飛ばすことができる仙人です。魂が抜けている7日間、弟子に体を見張らせていましたが、母親の危篤の連絡が入り、弟子は1日早く鉄拐の体を焼いてしまいます。帰る肉体を失った鉄拐は、足の悪い餓死者の身体を借りました。そんな創造力を掻き立てる魅力的な仙人の姿を描くのも画師の力量です。秋月は薩摩島津家の家臣でしたが、雪舟に画を学び、明にも渡りました。
さまざまな絵師の鉄拐仙人を見比べるのも面白く、10月22日まで東京国立博物館東洋館で開催中の「常盤山文庫の名宝」展で紹介されている、啓孫筆の鉄拐図では、小人のような魂が空を歩いていますよ!(そして魂も杖を持っているのが面白いです)

月に兎図

蔵三筆「月に兎図」、室町時代(16世紀)、常盤山文庫所蔵(慶應義塾寄託)

【学芸員コメント💬】
月を背景に兎が2羽寄り添っています。大きな月と兎がこのように配置されると、小さな兎の命の大きさを感じざる追えません。兎の赤色と黄土色の同心円状の丸い眼、白い体毛が幻想的な趣を高めています。月の兎は、不老不死のシンボルでもあります。当時の人は、この絵を見て何を感じたのでしょうか。動物は親しみやすく、本図のような花鳥画を好んだ禅僧も多かったはずです。本展覧会でも人気の1図です。
作者の蔵三は、本作品以外に水墨山水図屏風や猫の絵などが伝わっています。本図だけでは大和絵の画師とも捉えられそうですが、漢画的な主題を描いた画師のようです。江戸時代には、小栗宗湛と混同されていました。

水仙小禽図

宗山等貴賛「水仙小禽図」、室町時代(15-16世紀)、常盤山文庫所蔵(慶應義塾寄託)

イバラの枝に鳥がとまっています。白い花は水仙。五山僧の間では、水仙といえば黄庭堅の詩が広く知られ、その詩が、水仙のイメージを決定づけました。その詩の内容は、心を掻き乱す女神としての水仙、また白い花のなかで、水仙にとって、梅が兄、沈丁花が弟であるというフレーズでした。本図に付された宗山等貴の賛(漢詩)でも、黄庭堅の詩を引用しています。鳥の羽毛が繊細に描かれ、上品な趣のある作品です。足利将軍家の御用絵師である小栗宗湛の一派などによる制作の可能性もあります。鳥の表情も見どころです。

おわりに

いかがでしたか?本記事では、担当学芸員によるイラストとコメントで、展覧会出品作品の見どころをお伝えしました。
「禅」「水墨画」なんて言われちゃうと、「難しそう…😫」と思ってしまうかもしれません。
ですが、ご紹介したとおり、実は本展覧会ではうさぎ🐇やことり🐤、さる🐒など、かわいい動物が描かれた作品も多数!(他にも🐸や🐯なんかも…)そしておごそかなイメージの仙人たちにも、実は「おいおい!」なエピソードがあったり(「鉄拐仙人図」の弟子!師を火葬すな😱)。

にこにこしちゃうような作品もたくさんなのです😊

展覧会は12月1日(金)まで。本記事やイラストをご覧になって、展覧会に興味を持った!という方や、この作品がまた見たい!という方がいらっしゃいましたら幸いです。

ぜひ、KeMCoへ「臥遊」しにいらしてください😉


「常盤山文庫×慶應義塾 臥遊―時空をかける禅のまなざし」

【会期】2023年10月2日(月)〜12月1日(金)
11:00–18:00 土日祝休館
特別開館|11月25日(土)
臨時休館|11月20日(月)

文責 眞下菜穂(慶應義塾ミュージアム・コモンズ)


👀読み応えあり!学生スタッフKeMiCoのHonokaによる展覧会の楽しみ方はこちら🤗


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