展示室からのエフェメラ便り✉️④河口龍夫・冨井大裕の二人展〜冨井大裕編〜
KeMCoでは現在「エフェメラ:印刷物と表現」展を3/18(月)から5/10(金)まで開催中!🌸
noteではエフェメラ展の会場の様子をご案内してきました⏬
今回は会場レポート第四弾🗒✒️Room2:河口龍夫と冨井大裕の二人展からのレポート・冨井大裕編です!
はじめに
Room2については、前回のnote記事で前編として河口龍夫さんの作品をご紹介しました。
エフェメラ/印刷物に関心を寄せるお二人ながら、両者のアプローチは全く異なるようで……ご自身に関係する印刷物に対して描きこんでいく河口さんに対し、冨井大裕さんはご自身とは関係のない印刷物に元に戻せる表現を加えていく※のだそうです。
具体的にはどういうことなのでしょうか。エフェメラ/印刷物とどのように向き合うのか。お二人の違いや共通項を探りつつ、作品を見ていきたいと思います✨
※渡部葉子「展示ノートーー印刷物についての2つの態度」『[展覧会カタログ]エフェメラ:印刷物と表現』慶應義塾ミュージアム・コモンズ、2024年、67頁
冨井大裕
「自分と無関係な印刷物」を「元に戻せる表現手段」で彫刻作品に展開するという冨井さん。こちらの作品群では、各国の紙幣にハサミが入れられ、ホチキスで留められています✂️
そしてこの作品には…我らが福沢諭吉先生の肖像、もとい、一万円札が使われているようです👀💴人物像が入っているなんて思えないような複雑な構造体ながら、隙間からちらりと覗くお目々が印象的です。
その手前には元・千円札の姿も。ここでは元・一万円札と対照的に人物像であることを明確に伝えるようにシルエットが残されていますが、野口英世の目👀は封じられています。
冨井さんの公式Webサイトには、「作ることの理由」というステートメントが掲載されています。
紙幣は単なる紙でありながらお札としての情報を与えられ「常識的にまとっているイメージ」を確立した最たるものです。そんな紙幣に、ハサミとホチキスで可逆的なままに新たな構造へと変化を与えることは、「ものをそのままでありながら異なるものとして立ち上げる」というメッセージに呼応しているようです。
冨井大裕×慶應のエフェメラが作品に
さらに、冨井さんもまた慶應のエフェメラ/印刷物を作品にしてくださっています。
実は冨井さん、過去には慶應義塾大学アート・センターで「SHOW-CASE project No.0 冨井大裕 ブラインド・コンポジション」(2014年)を開催されていたので(⏬)
それを踏まえたもの……?と思いきや、選ばれたのはその時の印刷物等ではなく、KeMCoで去年開催した展覧会チラシ!冒頭に引用したように、使われた展覧会チラシはどれも冨井さんと「無関係なもの」でした。
何度も目にしたデザインながら、切り込みが入り、チラシの状態では有り得なかった曲線が生まれることでこれまでと異なる印象を与えられます。一枚の紙ペラだった時にはおよそついたことのないであろう影の形も面白いですね。
しかし、元々が「発掘展」や「臥遊展」のチラシであるということも見て取れ、その時限的な情報を伝えるという役割を担ったエフェメラの「過去」を引き受けて造形している様が興味深く思われます。
また、ホチキスを外せば元の形に戻るという、立体として考えると「儚い」とも言えそうな点からは、この作品もまた「エフェメラ」的な性質を持っているように思わされます。
おわりに:アーティスト・トーク開催🙌🏻
なんと今週末には、冨井さんのアーティスト・トークが開催されます🗣
ご予約受付中!ご参加お待ちしております✨
冨井大裕|「経験をみること」 4月20日(土)15:00–
聞き手:渡部葉子(慶應義塾大学アート・センター/KeMCo)
その他、各種イベントについてnoteやYouTubeでも配信しております。展覧会と合わせてお楽しみいただけましたら幸いです😊
KeMCo企画展「エフェメラ:印刷物と表現」
日付|2024年3月18日(月)~5月10日(金) 11:00–18:00 土日祝休館
特別開館|3月30日(土)、4月20日(土)
臨時休館|4月1日(月)、4月30日(火)~5月2日(木)
場所|慶應義塾ミュージアム・コモンズ(三田キャンパス東別館)
入場|どなたでもご覧いただけます・無料
主催|慶應義塾ミュージアム・コモンズ、
特定⾮営利活動法⼈ Japan Cultural Research Institute
協力|慶應義塾大学アート・センター
出品協力|東京国立近代美術館アートライブラリ
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文責 KeMiCo Honoka