展示室からのエフェメラ便り✉️③河口龍夫・冨井大裕の二人展〜河口龍夫編〜
KeMCoでは現在「エフェメラ:印刷物と表現」展を3/18(月)から5/10(金)まで開催中!🌸
noteでも複数回にわたってご紹介してきました⏬
今回は会場レポート第三弾🗒✒️Room2:河口龍夫と冨井大裕の二人展からのレポート・河口龍夫編です!
はじめに
Room2を彩るのは、現代を生きるアーティスト、河口龍夫さんと冨井大裕さんの作品です。
お二人の共通項は、何らかの形で「エフェメラ/印刷物」にタッチした作品を制作されているということ。
エフェメラってなんだっけ?という方はこちらからぜひ⏬✨
しかし、エフェメラ/印刷物へのアプローチは両者で全く異なるそうです。
展覧会カタログを参照してみましょう👀
Room2での、「エフェメラ/印刷物と現代における表現の接続」パートを企画された渡部葉子さん(ミュージアム・コモンズ副機構長/慶應義塾大学アート・センター教授・キュレーター)は以下のように述べられています。
同じ印刷物でも、自分に関係するものと無関係なもの。そしてエフェメラを表現の場とした時に、元に戻せる表現と戻らない表現。その違いを作品の中に見つけることができるでしょうか。
さあ、展示室へ入っていきましょう😊✨
河口龍夫
こちらの作品では、何やらチケットが画面の中に閉じ込められています。閉じ込められたチケットは、左:京都市美術館「河口龍夫ー関係・京都」展(1999年)招待券、右:兵庫県立美術館・名古屋市美術館「河口龍夫ー見えないものとみえるもの」展(2007年)招待券。どちらも確かに、河口龍夫さんご本人と密接に関わるエフェメラです。
1999年、2007年のそれぞれの展覧会会期終了でチケットとしての役目を終えたエフェメラ=展覧会チケットが、河口さんの手を介して作品となり、制作から10年、20年と経った今、再び人々に見られる対象となり、KeMCoの展示ケースに収められています🎫
興味深いのは、チケットを閉じ込める白いもやっとしたものの素材です。これは実は蜜蝋🐝60度前後で溶け出す材質なので、(やろうと思えば……)再び取り出すことができる、というのです。ひまわりの種も、取り出されたその時には再び花を咲かせるかもしれません🌻そんな可能性を閉じ込めたタイムカプセルのような、ワクワクする作品です⏳
この作品は、河口さんの作品を中心としたトークイベント「トークセッションIII アーティストとアーカイヴ:《陸と海》(1970)を巡って」(↓)の催事ポスターに描き込んだもの。
写真の外側に広がっていく波の様子は、雄大でもあり、デザイン的でもあり。写真と描き込みの相互作用で、カメラを通した見え方と河口さんの目と手を通した見え方が組み合わさって開催情報の伝え手としてのエフェメラに、感覚に訴える要素を追加した仕上がりになっています。
去る4/11に行われた河口龍夫さんのトークイベントに筆者も参加してきたので、書きたいことはまだまだあるのですが……ここはぐっとこらえて、その内容は次のnoteに載せたいと思います😤💪
河口龍夫×慶應のエフェメラが作品に
さらに、展示室右の壁面には、河口さんが過去に慶應義塾大学アート・センターで開催された展覧会「[現代美術展]Artist Voice I:河口龍夫 無呼吸」(2021年4月19日〜 7月30日)のポスターから生まれた作品が並びます。
これらの作品はコロナ禍と大きな関わりを持ちます。
一見黄色く塗られた紙飛行機が色とりどりに飛んでいる美しい彩のいくつかのパターンに見えるこの描き込みですが、実はこの彩は感染症が広がり毎日コロナによる死者数が報道される中、河口さんがその日の死者の数だけ点を描き込んだ、という背景があります。レクイエム、追悼としての点。パンデミック、不要不急の外出を避ける、マスク、消毒、自粛……。大学でも、全ての授業がオンラインになり、授業前後の他愛のない会話が消え、会食が消え、サークルでは対面活動の一挙手一投足に許可申請が必要になりました。
あのコロナ禍の閉塞感からなんとか抜け出したいという思いが飛行機を飛ばしているかのように見えてきます。
おわりに:アーティスト・トーク開催🙌🏻
今月、Room2で二人展をされている作家お二方のアーティスト・トークが予定されています🗣河口さんのトークは終了してしまいましたが、noteでもレポートさせていただく予定です🗓️
冨井大裕さんのトークの方は受付中!ぜひお越しください😊
河口龍夫|「長生きしたカゲロウ」 4月11日(木)18:00– ※終了
予約受付中!⏩ 冨井大裕|「経験をみること」 4月20日(土)15:00–
両日とも 聞き手:渡部葉子(慶應義塾大学アート・センター/KeMCo)
※参考文献
『[展覧会カタログ]エフェメラ:印刷物と表現』慶應義塾ミュージアム・コモンズ、2024年
KeMCo企画展「エフェメラ:印刷物と表現」
日付|2024年3月18日(月)~5月10日(金) 11:00–18:00 土日祝休館
特別開館|3月30日(土)、4月20日(土)
臨時休館|4月1日(月)、4月30日(火)~5月2日(木)
場所|慶應義塾ミュージアム・コモンズ(三田キャンパス東別館)
入場|どなたでもご覧いただけます・無料
主催|慶應義塾ミュージアム・コモンズ、Japan Cultural Research Institute
協力|慶應義塾大学アート・センター
出品協力|東京国立近代美術館アートライブラリ
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文責 KeMiCo Honoka