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SDGs WSレポ 「慶應義塾中等部×KeMCo 物質循環ワークショップ」🌿

現在、慶應義塾ミュージアム・コモンズでは、新春展2024「龍の翔る空き地 唐様前夜:林羅山とそのコミュニティ」が開催中です🎉
本展では、慶應義塾のキャンパスで文化財を巡る活動を行う部門から、今年の干支である「龍」にまつわる作品を集め、展示しています🐉✨

しかし本展はそれだけでなく、これまでKeMCoが行なってきた慶應義塾一貫教育校・慶應義塾中等部とのコラボレーション展示も実施しています🏫💫

そこで今回は、そのコラボレーション展示の一部を担う、SDGsプロジェクトの一つをご紹介します!

その名も、「慶應義塾中等部×KeMCo 物質循環ワークショップ」🌱
昨年9月12日(火)に、メディア・アーティストの三原聡一郎さんを講師にお迎えして開催しました🥳🌈

本展ではその成果の一部が展示されているのですが、今回はそのワークショップ(以下WS)に参加したKeMiCo Noekaから、成果物ができるまでのレポをお届けします👂🏼


はじめに

慶應義塾ミュージアム・コモンズ(KeMCo)では昨年度から、SDGs達成に向けた取り組みを実践している慶應義塾中等部と協同して、13番目のゴール「気候変動に具体的な対策を」を主題としたプロジェクトを展開しています✨

今年度は「アーティストのまなざしを通じて生態系や循環について考えるプログラム」を展開しており、本WSもその一つとなります💪🏻

今回は、アート・プロジェクトとして「土づくり」を実践されているメディア・アーティストの三原聡一郎さんを講師としてお迎えし、「身の回りのもので筆記具をつくる」をテーマに、慶應義塾中等部の生徒の皆さんとアートの視点からSDGsについて考えてみました🎨🍃

実は、三原聡一郎さんには、昨年7月より始まったKeMCoのコンポスト企画、ケムコンポストでも大変お世話になっております🥬

コンポストの概要に加えて、慶應義塾中等部とのSDGsプロジェクトや三原さんについての詳しいご紹介は、下の記事からぜひご覧ください👩🏻‍🌾🥕

では、WSの内容に入っていきましょう📌

WSは2部制で、それぞれ普段は捨ててしまうようなものを再利用して、身の回りの筆記具であるインク絵の具、そしての製作を行ないました。

まずは前半の部、インクつくりと手作りの絵の具をつかった印刷の体験からご紹介します🧪🧫

前半戦のプログラム🔖(畑中撮影)

1.1 インクつくり

前半の部は、中等部の松本守先生にご協力いただき、松本先生が担当されている選択授業「書道×SDGs」を受講している生徒の皆さんが参加してくださいました🖊

三原さんのご挨拶のあと、インクはどのように作られているのか、というお話からWSスタート☝🏽✨

+ インクの匂いを嗅いでみる

インクは基本的に色素+溶剤で作られていて、今回作る水性染料インクは、古典インク / Iron gall ink と呼ばれるもので、タンニンでできた色素との溶剤を混ぜ合わせて作成するのだそう🌀

その色素に普段は捨ててしまうさまざまなものを利用して、インクを作成していきます💪🏻

作業に入る前に、すでに三原さんが作ってきてくださったインクをみんなで嗅いでみることに…

匂いを嗅いでいる様子👃🏼

お茶っぱや、コーヒー、ワインから作ったものなどがあり、お茶から作られたインクは海藻のにおいがする😳コーヒーから作られたインクは飲めそうなにおい…🤔との声が上がっていました🙌🏼

ちなみにワインはバルサミコ酢のような匂いがしました🍷🥩

+ 鉄を粉々にする

匂いを嗅いで完成形のイメージを膨らませたら、ここからインクづくりの作業に入っていきます💪🏻

お茶などに含まれる渋味の成分であるタンニンが色素となるのですが、鉄と反応することでより濃い色を出すそう。

そこで、身の回りにある鉄材を粉々にして、鉄粉を作成してみることに🔩

鉄を削る三原さん🌪(畑中撮影)

慶應義塾大学三田キャンパスの廃材置き場から拾ってきた鉄製の部品を、自動のやすりがけの機械に少しだけあてて削り、鉄粉にしていきます。

生徒の皆さんにもチャレンジしていただいたのですが、力の加減によっては摩擦で
熱が発生するようで、熱くなったら次の人に交代するという流れができていました🥵💦

ある程度削ったところで重さを測ってみたところ0.2gの鉄粉ができていました⚖️

+ お茶と鉄を煮る

この削り出した鉄粉とお茶っぱ、そして塩ひとつまみを水で煮て、タンニンの色素を出していきます🍵
煮詰めていくにつれ濃い緑色になっていき、教室もお茶の香りに包まれていきました💭

煮はじめてから5分後(畑中撮影)

初めは抹茶のような色だったのが…

煮はじめてから10分後(畑中撮影)

段々と濃くなってきて…👀

しばらくしたらレモン汁を投入!🍋💦
酸を加えることによってより濃い色になるそう🧐

煮はじめてから20分弱(畑中撮影)

最終的にはこんなに濃い色になりました!

これを毎日かき混ぜて、カビが発生したら取り除いてまた煮て…を繰り返して10日後に濾すとやっとインクが完成するそう😳
骨の折れる作業ですね…

1.2 絵の具をつくって印刷

次は絵の具をつくって、シルクスクリーンでの印刷にチャレンジしてみることに💪🏻💨

絵の具は先ほど紹介したインクとは異なり、色素+バインダーで作られるそう🎨バインダーとはくっつけるものや樹脂のことを指します。
先ほどのインクとは違って、粘性が求められるということですね💡

+ 素材を挽く

絵の具は、コーヒー茶殻、そして花粉顔料として、そこにバインダーとなるアラビアゴムメディウムを混ぜ合わせて作っていきます🌀

まずはその顔料つくりのための素材を挽いていきます🌨

そのために使う道具が…

自動石臼機で材料を挽いている様子⏳(畑中撮影)

この、三原さん作の自動石臼機です🛞✨
通常どおり上部の穴から材料を入れたら、あとは自動で回転してくれるこの装置。コーヒーや茶殻を投入し、細かくなるまで放置します。

十分細かく、粉末状になったら、次はメディウムと混ぜていきます🌪

+ 花粉、コーヒー&茶殻とメディウムを混ぜる

花粉は挽く工程は踏まず、メディウムと混ぜていく過程で細かく粒を潰していくことに✊🏼

花粉を取る三原さん(畑中撮影)
とった花粉にメディウムを入れる三原さん(畑中撮影)
ちなみにこの花粉は食用だそうで、2粒ほどいただいたのですが、ほんのり甘い抹茶のような風味がしました!スイーツに使えそう😚(畑中撮影)

これをよく混ぜ合わせると…

できあがり🌞(畑中撮影)

このようなトロトロした状態になって完成!
花粉の黄色がそのまま絵の具になりました🎨

この絵の具を使ってシルクスクリーンで刷っていくのですが、これが意外と難しいんです💨

使う道具類📝(畑中撮影)

まずはシルクスクリーンの上に、線状に絵の具をのせていきます🥄

満遍なくのせるのがポイント💡(畑中撮影)

そしてのせた絵の具をヘラで一気に伸ばす💪🏻✨

誰かに押さえておいてもらうとずれなくてやりやすい!(畑中撮影)
思い切り伸ばすのが重要💡(畑中撮影)

すると…完成!🎉

鮮やかな黄色が出ていますね💛(畑中撮影)

左右満遍なく絵の具がのるような力加減が意外と難しく、苦戦する生徒さんもいらっしゃいましたが、左右で濃淡が異なるのも味があって素敵でした💭

前半の部はここで終了💫
続いては放課後に行なった、筆の製作体験です🖌

2. 筆をつくって書いてみる

後半の部では美術部のみなさんにご協力いただき、捨てられてしまうようなものを使って、筆をつくってみる体験を行ないました💪🏻✨

後半の部のプログラム🔖

+ 持ち柄と筆先を選ぶ

筆は大きく分けて持ち柄筆先に分けることができます✍🏼

今回はその2つを、普段は廃棄してしまうものも含めて、身の回りにあるものの中から自由に選んで組み合わせてみることにチャレンジしました!

たくさんの材料🧶(畑中撮影)

まず、筆先に使う材料は道に落ちている木の枝から毛糸、洋服についていたファー、スポンジ、果物を包むネットなど、そのほか名もなきさまざまなものが集められました👛

柄には、中等部のごみ置き場にあったほうきや、なんとヴァイオリンなどの材料を使っていくことに!🎻

これらを組み合わせて一体どんな筆ができあがっていくのでしょう…!

+ 組み合わせて筆にする

材料が選べたら、道具を使って加工し、接続させていきます🩹

多様な道具類🪚(畑中撮影)

使える道具はたくさんあり、切ったり穴を開けたりくっつけたり、加工し放題です!

制作時の様子💭
協力して制作する様子もたくさん見られました

生徒のみなさんの手によって、本来は絶対に結び付かなかったであろう物同士が組み合わされ、筆になっていきます💭

そんなみなさんの様子に刺激され、私も一本作ってみました!

(畑中撮影)

それがこちらです✨
プラスチック片と、綿と、布の切れ端を木の枝にくっつけて、3つ筆先を持った筆を作ってみました🪵

普段身の回りにある、ましてやゴミとも思えるようなものをどうやって筆に使うか、という視点で観察し、手を動かしていく経験は非常に新鮮でした!

+ 書く

筆が完成したところで、試し書きをしていきます✍🏼💫

試し書きの様子💭

墨汁に筆をつけてみると、墨汁を含みやすい素材もあればそうでないものもあり、素材によって全く異なった線が描かれていきました✨

持ち柄によって書きやすさも異なります✍🏼(畑中撮影)

みなさん作っていくペースが非常に早く、一本作り終わっても二本三本と、余っている材料を使って新たな筆を作り出していました💪🏻✨

+ みんなの筆を見る

最後に、みんなの筆を並べてみて、その多様さを見比べてみました🎨

ずらっと並んだ筆たち✨

こうして見てみると、一見筆には使えそうにないものもあり、みなさんの発想の豊かさが伝わるのではないでしょうか!👀

並べてみたことでそれぞれの共通するところや違いが浮き彫りになり、「筆をつくる」という同じ目的のもとでも、人によって全く異なるアプローチをとることが面白く、また勉強になりました🙌🏼

おわりに

この中等部生のみなさんが作成した筆が、現在新春展2024「龍の翔る空き地 唐様前夜:林羅山とそのコミュニティ」と併せて、1Fエントランスにて展示されています!🎉

個性豊かな筆たち✨

さらに、今週末1月20日(土)と、2月3日(土)の特別開館日には、このWSの講師を務めたメディア・アーティストの三原聡一郎さんが製作され、現在KeMCoがお借りしているコンポスティングのための装置も、同じ1Fエントランスにて展示いたします🎊

展示の様子。右中央がコンポスト装置です⚙️

ぜひ、新春展2024「龍の翔る空き地 唐様前夜:林羅山とそのコミュニティ」と一緒に、慶應義塾中等部のみなさんとのコラボレーションの成果を見に、慶應義塾ミュージアム・コモンズへ足をお運びください🚶🏻‍♀️🦮🚶🏻🐈


新春展2024「龍の翔(かけ)る空き地 唐様前夜:林羅山とそのコミュニティ」

日付|2024年1月10日(水)~ 2月9日(金)11:00–18:00 土日休館
特別開館 1月20日(土)、2月3日(土)
臨時休館 1月22日(月)、2月5日(月)
場所|慶應義塾ミュージアム・コモンズ(三田キャンパス東別館)    
入場|どなたでもご覧いただけます・無料
共催|慶應義塾ミュージアム・コモンズ、慶應義塾大学附属研究所 斯道文庫
協力|慶應義塾大学アート・センター、慶應義塾大学信濃町メディアセンター(北里記念医学図書館)、慶應義塾大学日吉メディアセンター、慶應義塾大学文学部古文書室、慶應義塾大学文学部美学美術史学専攻、慶應義塾福澤研究センター、慶應義塾大学三田メディアセンター、慶應義塾大学文学部民族学考古学専攻

文責 KeMiCo Noeka