【エフェメラ展学生企画に密着・後編】 KeMCoM×KeMiCo、エフェメラを語る
慶應義塾ミュージアム・コモンズ(通称:KeMCo)では、学部生・院生として慶應義塾で学びながら活動している「学生スタッフ」が存在します👀
そんな学生スタッフたちは、毎回のKeMCoの展覧会に合わせて「学生企画」を企画しています!
現在開催中の「エフェメラ:印刷物と表現」展の学生企画の模様を、前後編にわたり密着取材。前編では、来場者目線で学生展示の楽しみ方をご紹介しました。後編の今回は、展示を企画した学生スタッフ・KeMCoMたちを突撃。企画の裏バナシを聞かせてもらいました🤫
KeMCoの学生スタッフの紹介と企画の内容は前編で詳しくまとめているので、是非そちらをご覧になってから後編をお楽しみください👍
展示を作ろう
KeMCoMたちは、KeMCo StudI/O(ケムコ・スタジオ)を拠点に活動している学生スタッフ。ケムコ・スタジオには、3Dプリンターやレーザーカッターなどのハイテクツールも備えられており、クリエイティブ活動のベースとしての機能が整備されています。
おしえてKeMCoM
まずは、KeMCoMの皆さんに今回の企画の背景について聞いてみました📝
🎤KeMiCo・Hakuto
>KeMCoMの企画はデジタル分野とリンクしたものが多いイメージがありま
すが、今回は紙メインのボード展示で、少し新鮮でした。
👥KeMCoMたち
『今回取り上げられているエフェメラは、紙をベースとしたもの。確かに普段はデジタル関連の企画にも多く取り組んでいるのですが、今回はオブジェクトにこだわった企画にしようと思ったんです』
前回展の新春展「龍の昇る空き地」では、展示室1室をまるまる使った企画を実施したKeMCoM。新春展という事で、書初め体験やオリジナル御朱印のコーナーに加えて、AIやARフィルターなどデジタル技術を用いた展示も目立ちました。(詳しくはこちらから↓)
今回の企画ではエフェメラの特性も踏まえ、紙ベースの展示で勝負。前編で紹介したように、ボード上に展示を構築しました。
👥『KeMCoMの企画を通じて、来場者の思い出を作りたいという想いがあります。来場者の皆さんの能動的な参加を引き出すために、来場者のエフェメラに対する思いも聞いてみたいと思ったんです』
合わせて展示されているKeMCoMたちの思い出のエフェメラには、自分たちがエフェメラについてよく考えるだけでなく、来場者の参加の導入としての機能を期待したそうです👀
ケムスタ稼働中⚙️
欲が出てきた筆者。企画作りの具体的な作業も教えてもらいました📝
🎤>まずは何から始めるんでしょうか…?
👥『最初はブレインストーミングから始めますね。とにかくアイデアをたくさん出します。そこから出てきたアイデアをカテゴリー別に分類分けしたり、より現実的なものに絞ったりして企画を決めていきます』
👥『より現実的なものを絞っていく作業ではありますが、非現実的と思われるようなアイデアの中にも結構いいものが転がっていることもあるんです』
学部生・大学院生を問わず、さまざまな専攻から集まるKeMCoMのメンバーたち。多様な領域から学生が集まるからこそ、それぞれのアイデアがクロスオーバーする時に、独創的で興味深い企画が生まれるのかもしれません💡
調整はミリ単位
KeMCoMのプロジェクトで大活躍するのが、レーザーカッター。
光を収束させて物体に照射することで、彫刻を施したり切断することができる装置です。今回の展示でもレーザーカッター製のアイテムがちらほら…。
👥『実はこれもレーザーカッター製なんですよ』
と言って見せてくれたのがこちら。
こちらは来場者の思い出のエフェメラを書いてもらうために作成した専用のカード。さまざまなカラーバリエーションが用意されています🎨
実はこの用紙、もともと2枚の紙に分かれているものを組み合わせたもの。ホッチキスを使わずに組み合わせることができる優れもので、KeMCoMのメンバーが考案したオリジナルのアイテムなんだとか👀
仕組みはシンプルですが設計は緻密。ミリ単位で調整しながら試作を重ねたそうです🧐
来場の際はKeMCoM謹製のカードにも注目してみてください🔥
KeMCoM×KeMiCo、エフェメラを語る
ここまで展示の裏側をあれこれ紹介してもらいましたが、少々気になっていたことが。それは、今回の展示のキーワードになっている「思い出」というキーワードです🔑
エフェメラとは、チラシ・パンフレット・ポスターをはじめとする本来長期の保存を前提としない印刷物を指します。また、エフェメラ(ephemera)の由来となる"ephmeral"という単語には「束の間の」「一時的な」といった意味があります。今回のKeMCoM企画でエフェメラを表現している言葉は、先にあげた言葉とコンフリクトするかのような「思い出」「捨てられない」といった言葉たち。KeMiCoとKeMCoMでは、エフェメラのとらえ方が違うのでは…?と感じたのです👀
KeMiCoから見たエフェメラ
KeMiCoは学芸部門をフィールドとする学生スタッフ。KeMCoの展覧会では本展示の準備段階から携わります。今回のエフェメラ展でも、かなり早いタイミングから展示するモノに触れています。
例えば、1階エントランスで放映しているエントランス動画。既に学芸員資格を取得している大学院生のKeMiCoが中心となり、展示しているエフェメラの中身を紹介する動画を製作しました🎥
取り扱いに細心の注意を払いながら「展示品」としてのエフェメラに触れ、
それぞれのアーティストが紙面上で表現したデザイン・意匠に注目しつつ、それらをいかに効果的に魅せるかを考えながらの撮影でした👀
制作の裏側はこちらのnote記事にまとまっています↓
本展の広報に携わった私も、エフェメラの紙面上に詰め込まれたアーティストの独創性や創意工夫に想いを馳せていました💭
例えば、本展に合わせて東京国立近代美術館アートライブラリさんよりお借りし、全号展示が実現した「Art & Project bulletin」。日本人も含む世界中のアーティストが各号で参加しています。展示面積の都合上、表紙のみの展示になっている号が多いですが、一定のテンプレートが存在する表紙でさえ、作家ごとの個性が現れています💡
また、設営に立ち会った際に目にした「展示ケースに入る前のエフェメラ」からは、紙面上から読み取れる特性だけでなく、エフェメラのオブジェクトとしての特性も印象に残りました。
ほとんどの展示品に共通する"薄さ""軽さ"そして"簡素なつくり"。それほどまでにエフェメラは長期保存を前提とせず、短命で一時的な印刷物であることが強く印象付けられます。
KeMCoMから見たエフェメラ
では、KeMCoMたちはエフェメラをどのように捉えているのか、思い切って聞いてみました🎤
👥KeMCoM
『確かにエフェメラは本来長期保存がされないものです。では、なぜ現代に保存され残っているエフェメラがあるか、を考えたんです』
KeMCoMたちの着眼点は「保存されたエフェメラ」。捨てられるはずのモノがなぜ捨てられずに残ったのか、ということに疑問を当てたようです👀
👥『それは、エフェメラが「人の思い出を留めるもの」だからだと思います。エフェメラは、実際に目にしたり手に取ったりすることで、私たちに「思い出」を想起させると思うんです。本来なら捨ててもいいモノであっても、それが私たちの思い出を思い出させてくれるものだから捨てられないんじゃないでしょうか』
「捨てられずに残ったエフェメラ」の背景を読み解いたKeMCoMたち。たどり着いた答えは「人の思い出を留めているから」。確かに、思い出が宿っているモノは、些細な印刷物であっても捨てるに捨てられません🥺
👥『久しぶりに見たり手に取ったりするときに「懐かしさ」を感じるのがエフェメラだと思うんです。「エフェメラは思い出になる」ということを、私たちの企画を通じて来場者の皆さんに再認識して頂けたら幸いです』
それぞれのエフェメラ
作品に触れる中でエフェメラの作り手であるアーティストに注目し、エフェメラ(ephemra,ephemeral)の語義に沿った解釈を広げたKeMiCo。一方のKeMCoMは、エフェメラの受け取り手である人々に注目し、人とエフェメラの関わりの中で「思い出」というキーワードを見出しました。
同じ学生スタッフでも、身を置くフィールドでこれだけ大きくエフェメラの解釈が異なっていました😮
エフェメラの秘めるポテンシャルに感じ入ると共に、改めて自分の周りを見渡して、「思い出」を想起させるエフェメラを呼び覚まし、しばしの郷愁に浸ってみたい気分になりました🍵
まだ間に合う!エフェメラ展
以上、2編にわたってエフェメラ展学生企画を取材しました。
エフェメラ展はGW休館期間(4/27~5/6)を挟んで、5/10まで開催しています!
KeMCoMたちの学生企画も合わせて是非お楽しみください!
あなたにとっての思い出のエフェメラは何ですか?
KeMCo企画展「エフェメラ:印刷物と表現」
日付|2024年3月18日(月)~5月10日(金) 11:00–18:00 土日祝休館
特別開館|3月30日(土)、4月20日(土)
臨時休館|4月1日(月)、4月30日(火)~5月2日(木)
場所|慶應義塾ミュージアム・コモンズ(三田キャンパス東別館)
入場|どなたでもご覧いただけます・無料
主催|慶應義塾ミュージアム・コモンズ、Japan Cultural Research Institute
協力|慶應義塾大学アート・センター
出品協力|東京国立近代美術館アートライブラリ
文責:KeMiCo Hakuto